出雲奪還、落日の連邦編
第33話 反攻開始
[まえがき]
今回の章は本来、出雲奪還編と落日の連邦編に分けた方が良かったかもしれませんが、どちらも短いため同じ章にしてしまいました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺たちが
そんな中、国内において惑星破壊兵器の使用に踏み切り、人類宇宙の各国からの
「大華連邦に対し、連邦が指定する二星系のうちのどちらか一星系の割譲ないし賠償金2億共通通貨単位の支払い」
という内容で、今回の両国間の事変の落としどころを打診してきたようだ。
共通通貨単とは人類宇宙で国家間の決済に共通に使うことのできる手形で10年程度の期限付きのものが多い。相手国の物品の購入が記載金額内で購入できる。決済期限において残額が5%を超えていた場合は、5%まで
これに対し、出雲のクーデター政権は、大華連邦が皇国内で指定する二星系がどちらもわれわれ瑞穂皇国が領有している無人星系だったこともあり、最終的に無人の一星系の割譲により、休戦協定を大華連邦と締結し名目上ではあるが事変の最終決着を得たようだ。
惑星破壊兵器『
大華連邦は領土拡張を国内に
休戦協定下でなくとも軍事力が乏しくじり貧のクーデター政権側から打って出ることはないだろうが、大華連邦は戦力が回復すれば休戦協定など簡単に破り必ず打って出てくる。両国ともその認識の上での休戦協定である。
今回皇国から大華連邦に割譲された無人星系に大華連邦の前進基地が作られると、われわれ瑞穂皇国の複数の有人星系が、一度のジャンプでの攻撃可能圏内に入ってしまうため、通常なら大華連邦、クーデター政権どちらにとっても有効な一手なわけだが、その程度のことはワンセブンの予測範囲内のでき事であり、こちらとしては早めに大華連邦に対して前進基地の建設をお願いしたいくらいである。
大華連邦の場合、軍事的失敗続きのため、エサに必ず飛びつくとワンセブンの見立てであり、これを見越したうえで、いちはやく遊撃艦隊の整備を進め、出撃させたわけである。
その遊撃艦隊の司令長官は中島少将。
彼は皇国航宙軍時代、竜宮星系のURASIMAに駐留する第44艦隊の旗艦軽巡香取の艦長を務めていた。ユーグ艦隊の竜宮星系への侵攻時、その対応を誤った第44艦隊の上層部はその後左遷され、中島中佐(当時)もその一人として不遇をかこっていた。
そういった状況の中島中佐(当時)をリクルートしたところ、航宙軍を退役しわれわれに合流してくれた。以来、わが方で新たに購入した工作艦の艦長を務めてもらっていたが、戦える男を遊ばせておくのはもったいないので、適当な理由をでっちあげて中佐から二階級昇進させて少将に上げたうえで、遊撃艦隊を任せている。当然だが乙姫における人事権は
宇宙空間で帽子などは邪魔なだけなのだが、中島少将は司令長官となったことを契機に、大むかしの海洋船の船長のようなひさし付きの帽子をかぶり始めたようだ。本人が気に入っているからとやかくは言わないが、ワンセブンによると、単なるカッコ付けではなく、薄くなった頭髪を隠すために帽子をかぶっているということだった。宇宙空間でも帽子は役にたつ事を俺もその時初めて知った。
大規模な人工惑星基地を本国から離れて建造する場合、建造物資の運搬のため補給線が伸び、国としての宇宙船輸送力を圧迫することになる。打開策としては、輸送船団の規模を大きくし一度の輸送量を大きくすることで輸送回数を減らすことが有効だが、エスコート艦の数には限度があるため船団規模に応じた十分な護衛を毎回つけられるとは限らない。それでも基地を干上がらせることはできないため補給は続けられる。こちらはこの輸送船団を襲撃し続けて、この無人星系を蟻地獄にしてしまおうという算段だ。大華連邦にとっては、輸送船とエスコート艦の喪失も痛いが、輸送船の積載物は、ただの民生品ではなく高価な軍需物資であるためかなり痛い出血となるだろう。
ここのところ、わが方の遊撃艦隊は予定通り大華連邦の周辺部を荒らしまわって、民間、軍事関連問わず、輸送船、エスコート艦を撃沈し続けている。この無差別攻撃で大華連邦の輸送船事情はかなりひっ迫しているはずだ。
ワンセブンの試算によると、大華連邦では国内宇宙船輸送力の余裕度が
一言で言えばエゲツナイ作戦だが、
今回の、無人星系割譲の報を受け、遊撃艦隊を一度URASIMAへ帰還させ、乗員の休養と補給を済ませることとした。大華連邦側に基地建設の具体的動きが出てきた段階で、遊撃艦隊を再出撃させる予定だ。
今回割譲された無人星系の名前は確かあったはずだが、ワンセブンはガトウと勝手に命名している。理由を聞けば、なるほどと
大華連邦にガトウ星系が割譲される以前より、ガトウ星系にはわれわれの広域探査システムを秘密裏に展開しており、URASIMAへの超空間通信用の中継ポイントもある程度の消耗を見越して複数個小惑星などに偽装させ設置している。一連の出来事が進んでいく前には、仕込みはすでに終わっていたという
[あとがき]
ガトウはもちろん、餓島、ガダルカナル島のことです。
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