第20話 陸戦隊編成準備
乙姫の第二次開拓団第一陣の歓迎会に顔を出して、少々の差し入れをした。この差し入れの他にも今回開拓団を運んだ大型貨客船に大量の民生物資、嗜好品を運ばせ、いったんURASIMAの倉庫に保管している。少しずつ貨物用の連絡艇で地表に降ろし、一次開拓団も含めた乙姫開拓団に提供していく予定だ。特別便を仕立ててまで、民生品や嗜好品を購入するするつもりはないが、機会があれば中央で購入し、竜宮星系に運ばせるつもりである。
地上の開拓団とこのURASIMAに拠点を置く俺の家、村田家との一体感を醸成していくためのコストと考えると安いものだ。ことあるごとに、こういった低コストの援助をおこなっていくつもりだ。
URASIMAの拡張工事も完了し、皇都にある屋敷からほとんどの使用人をこちらに異動させた。残っているのは屋敷の管理人とリクルーターを兼ねた連絡要員程度だ。
厨房関連の人員はうちの使用人と俺のためだけに食事を用意するにはこれまでも過剰だったのだが、さらに人員を増やし、うちの私兵団の面々も利用できるよう将校クラブの厨房も任せることにした。また将校クラブも士官、兵分け隔てなく利用することができるようにした。
しかし、後日兵員側のほうから、士官とは食堂は分けて欲しいとの要望があり、士官用の食堂を別に作ることになった。
先日の軌道エレベーターの起工式のおり、乙姫の市長を務める西田氏と会談し、いまある乙姫の自警団を装備も含め強化、拡充していくことに合意してもらった。教官については、こちらから
このところ、乙姫の開拓コロニーでは、うちから融資した金を使い最新鋭の建設機械やその他の作業機械をどんどん導入している関係で、単純労働力には余裕があるということだった。これは、こちらが意図したことなので、当然ではある。その余裕人員を自警団として
この自警団は将来的には、村田侯爵家の私兵団に組み込まれるのではという噂が立ったようで、応募者が殺到しているようだ。噂は例のごとくワンセブンが流したものだろうし、実際、うちで雇うつもりなので何も問題はない。最初からうちの私兵団で雇わないのは、それをしてしまうと開拓団内で
近く、地上に自警団用の訓練学校を開設する運びで、関連機器や資材、装備などはすでに発注済みだ。もちろん、そういったハード・ソフトの中には、陸戦隊員を養成するため必要と思われるものは全て含まれている。
軌道エレベーターのほか、乙姫の静止衛星軌道上ではいくつもの大型衛星の建設が始まっている。それらはほとんどが、工場衛星だ。そこでは最先端の工業部品を製造する予定だ。工場衛星用の金属資源の採掘のため、多くの小惑星採掘業者を誘致している。そういった、作業員たちのための宿泊、慰安のための施設なども徐々に整備されつつある。
そして、極めつけは、L2に存在するURASIMAの乙姫を挟んだ太陽側のラグランジュ点L1に宇宙船を建造する工廠惑星の建設だ。大型艦なら2隻同時に、小型艦なら4から6隻は同時建造できる規模の工廠を考えている。また工廠惑星では艦だけでなくジェネレーターやコンデンサーなどの大型機器も製造する。
一言でいって、いま皇国の中で最も熱い星系が竜宮星系なのである。
常識的に考えて、辺境星系がここまで発展、ないし発展中であれば、その戦略的価値が各段に高まるため、防衛艦隊を駐留させるのが普通だが、中央から航宙軍の艦隊が派遣されることはなかった。
ワンセブンの働きかけも行われているのだろうが、航宙軍自体、特に航宙軍の上層部が、俺たちにわだかまりを持っているようだ。うちのリクルートエージェントが積極的に航宙軍の中の有望な士官を勧誘しているのも彼らの反感を買っている理由になっているのだろう。
なに、構いはしない。皇国のために命を捧げるつもりで士官学校に入学して任官した連中を俺が有意義に使ってやろうというのだ。航宙軍の上層部の思惑で使い潰されるよりよほど満足できる生活が送れるはずだ。いや、この俺とワンセブンで送らせてやる。
自前の艦が完成するにはまだまだ時間がかかるので、実際のところ現在重点的にリクルートを進めているのは、操艦関係者ではなく、特殊部隊指揮官、特殊部隊将校、特殊部隊員だ。普段なら、こういった人材は簡単には手に入らないのだが、いい具合に航宙軍の評判が落ちている現状、それなりの人員が集まっているようだ。
自警団の訓練学校が開設されれば、村田印の特殊部隊を同時に立ち上げ、訓練していく予定だ。ワンセブンの予測する近い将来の変事に対応するためだ。
さらに、山田少佐が動き、中央研究所の出先研究所を乙姫に建設することが決まった。実験器具や資材の手配もあらかた終わったようで、研究所員と資材を乗せた貨客船が近いうちに竜宮星系を訪れるはずだ。何をこの乙姫の研究所で行うかというと、山田少佐を中心とした演算装置の開発である。正確にはワンセブンのデチューンモデルの開発だ。戦闘とジャンプに特化した純軍事用の演算装置を作る。ワンセブンのような一点ものではないので、コストについても十分考慮してもらうつもりだがそこまで難しい開発にはならないだろうと、山田少佐もワンセブンも言っている。
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