銀河をこの手に！－試製事象蓋然性演算装置X-PC17－

第22話 スラビア、再侵攻

　ミコリアナを席巻したのち、一度自国領内に戻って補給を済ませたスラビア共和国第二方面第１艦隊と第２艦隊だが、第２艦隊はその後大華連邦領域内に侵入し大華連邦の星系を順次巡りそのうち自国領に撤収していった。完全な挑発行動だった。

　戦艦主体の第１艦隊の方は自国領後方に下がり、これまで国内に温存されていた第二方面第３艦隊（雷撃戦隊主体）とともに第２艦隊の後詰の位置に付いて、第２艦隊を追って自国領内に侵入する大華連邦の艦隊を迎撃する構えをとっている。

　スラビア側のこの動きに対して、大華連邦宇宙軍はスラビア第２艦隊を確実に撃破するため主力の第１艦隊（戦艦主体）を送ったものの高速艦で構成された第２艦隊を捕捉することが出来ず、ただ翻弄されるだけだった。本国内に撤収したスラビア艦隊を追ってスラビア領への侵入することも政府内で議論されたが、現時点での本格的戦争は勝利が望めないと判断し断念した。

　一連の、スラビア共和国の動きにより、大華連邦の人類宇宙でのプレゼンスが急速に低下していった。

　活発に活動するスラビア共和国第二方面軍は、大華連邦からの圧力低下をうけ、その矛先を、皇国との境界領域に向け、圧力を加え始めた。

　スラビア共和国第二方面軍のこれまでの活発な動きを警戒していた皇国航宙軍は、スラビア共和国との境界領域の警戒をさらに厳とするため、従来より当方面で警戒を続ける主力の第７艦隊（戦艦主体）に加え、第１艦隊（巡洋戦艦主体）を派遣した。ほかに皇国中心星域には、外征を目的として創設された第３艦隊が控えている。

　現在皇国は、戦艦６、巡洋戦艦６、攻撃機母艦４の６×６×４艦隊を実現しており、皇国史上最強の戦力を誇った陣容になっている。皇国の主力艦隊はこれらを第７艦隊、第１艦隊、第３艦隊の三艦隊に割り振っている。

第７艦隊（打撃艦隊）

　戦艦×６

　重巡洋艦×６

　軽巡洋艦×６

　駆逐艦×３６

　＋各種補給艦など

第１艦隊（高速艦隊）

　巡洋戦艦×４

　重巡洋艦×８

　軽巡洋艦×８

　駆逐艦×４８

　＋各種補給艦など

第３艦隊（機動艦隊）

　巡洋戦艦×２

　攻撃機母艦×４

　重巡洋艦×４

　軽巡洋艦×６

　駆逐艦×３６

　＋専用工作艦を含む各種補給艦など

　わが村田軍はＵＲＡＳＩＭＡでの実験部の出先事務所を引き払い、新たに追加されたシリンダー部分に、本部事務所を構えた。今のところ、本部要員は俺を含めていつもの三名なのだが、うちの人数も増えてきたし、山田少佐には次の仕事があるので、そろそろ本部人員を増やす必要がある。乙姫のコロニーも含めて医療関係を充実させなければならないので、そちらの手配も速やかに行う必要があるが、目途は立っているようだ。

　それはさておき、新しい事務所内に構えた執務室の中、ＴＵＫＵＢＡ内のワンセブンと俺は会話をしているところだ。

「スラビアの動きもワンセブンの予測通りだ。なんだか怖くなるな」

『お褒めにあずかり恐縮です』

「そうか。それで、本当に皇国の航宙軍は負けないのだな？」

『甚大な被害を出しますがかろうじて、皇国領を守り切ることができると予測しています』

「甚大な被害というと？」

『主力艦では戦艦４、巡洋戦艦４、重巡以下の補助艦艇は多数を喪失するものと予測しています』

「甚大だな」

『撤退の許されない、星系防衛型会戦ですから仕方ありません』

「スラビヤ側の陣容は？」

『スラビヤ側の会戦前後の陣容は、ご覧の通りです』

スラビア共和国第二方面第１艦隊

　戦艦×６（２隻喪失、２隻大破、２隻中破）

　重巡洋艦×１２（４隻喪失、４隻大破）

　軽巡洋艦×８（６隻喪失）

　駆逐艦×４８（３２隻喪失）

　＋各種補給艦など

スラビア共和国第二方面第２艦隊

　巡洋戦艦×４（２隻喪失、２隻中破）

　重巡洋艦×８（２隻喪失）

　軽巡洋艦×８（３隻喪失）

　大型駆逐艦×１６（４隻喪失）

　＋各種補給艦など

「こっちも大概だな。ここまで被害が大きくなるまでに攻め手側なんだから撤退しても良かったろうに」

『本会戦における総合戦力は皇国が勝（すぐ）っていますが、当初より戦力が分断されるため、全力発揮が出来ません。スラビア側の損傷艦は早期に離脱したため喪失艦の数は少なくなっています。なお、重巡以下の補助艦艇の喪失数にはある程度の誤差を含みます。主力艦についてはほぼこの通りの会戦結果になります』

「……、われわれは介入しなくていいのか？」

『両軍が適度な消耗（・・・・・・・・）をすることが必要ですので、介入はお勧めしません。しかも次の作戦のため、現在ＴＵＫＵＢＡが改修作業中です』

「そうだったな。われわれは静観しながら、力を蓄えていくんだったな」

『前回、徹底的に敵をたたきましたので、当分ここ竜宮星系に手出しされることはないと思います。次の作戦のための高速連絡艇は、作戦担当人員とともにすでに皇都内の村田邸に搬入済みです』

　火と鋼の季節が皇都にも訪れようとしていた。

［あとがき］

２０２０年７月１８日

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２０２１年９月２６日

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