第13話 初パーティー

 スズネと言う少女は、どうやら僕に用があるみたいだ。


「よろしくスズネさん。知っていると思うけど、僕はタカヤ。というか他人にいきなり自分の情報を教えちゃダメでしょ!」


 一応情報の件は窘めるが、どうやら本人は気にしていないようだ。


「いえ、大丈夫です。こちらからお願い事をするんです。これくらいは提示させて下さい」


 そして、いきなり全てのステータスを開示した。


【Name】 スズネ

【age】 16歳

【職業】 1.盗賊

【Lv】 3

【HP】 40/40

【MP】 20/20

【力】 45

【体力】 30

【器用】 60

【知力】 50

【素早さ】55

【魔力】30


【スキル】

 ノーマルスキル

 短剣術<Lv2> 弓術<Lv2> 罠発見<Lv1>


 うん。間違いないね。念の為解析で確認したが、嘘は言っていない。


 完全な斥候タイプ。ステータス配分は僕と似てるな。


「それで頼みって?ここじゃなんだから席に着く?」

 

 こちらから聞き返し、すぐに断られないと分かったからか。少しホッとした表情をする。


 ホールの席に座り、改めて頼みの内容を確認する。


「はい。単刀直入に言います。私とパーティを組んで討伐依頼を一緒に受けてくれないでしょうか」

 テーブルすれすれに頭を下げるスズネに、慌てて顔を上げさせる。


「ちょっとちょっと。そこまでしなくても。でも何で僕なのかな?僕は昨日登録したての新人冒険者だよ?」


「うううん。先程のいざこざの際の身のこなしは、間違いなくただの低ランクの動きではありません。私は斥候型の弓矢メインなので、近づかれれば非常に危険となります。前衛に敵を引きつけてもらいながら急所を射抜く事が出来れば、今より非常に討伐が楽になります。最近Fに上がったものの、討伐依頼が達成できず悩んでいました。そこで先程の回避技術を目の当たりにして、是非お願いしたいと……」


 説明を続けるスズネの顔がどんどん暗くなっていく。


 あ〜なるほど。

 ランクが上がったものの、討伐依頼がうまくいかず、Lvも上げられず停滞してしまったのか。


 それなら藁にもすがりたい気分なんだろうな。

 まあ僕にとっても、悪い話しではないか。


「了解しました。一緒にパーティを組みましょう。たしかに2人で役割分担をすれば効率も良さそうですしね」


 OKを出すと、不安そうな表情が一気に明るくなり、さっきまでは見られなかった可愛い笑顔を向けてくれた。


「ホント!ありがとう!あっ…。んっうん。ありがとうございます。これでやっと停滞から抜け出せます!今日はもう日が落ちるので、明日から。明日から是非よろしくお願いします!」


 そう言って手を掴みブンブンと上下に振り、喜びを全面に表す。


「分かった。じゃあ明日の7鐘にギルドホールでいいかな」


「はい。よろしくお願いします!それじゃタカヤさん失礼します!」

 そう言って彼女は、盗賊職らしい軽やかな動きで、ギルドを後にした。


 スズネが居なくなったところで気が抜けたのか、どっと疲れを感じる。


 結局紹介された防具屋にも行けず。これから行く元気もない。

 防具がない状態は流石にまずいので、ギルド内の3階にある冒険者専用のショップにて革製の胴廻りとグリーブが低ランク冒険者用にセットになっていた為、購入した。


 今回のように紹介されたケースでもない限り、通常はここで装備を整えていく事が多く、今回のセットも駆け出しの冒険者が一番最初に買っていくセットとの事だった。

 これで格好だけは冒険者だ。


「さて帰ろうかな」

 こうして駆け出しの冒険者防具セットを手にし、ギルドを後にした。


 宿に帰るとすでに夕飯の、時間だった。


「おや。お帰りなさい。なんだい冒険者みたいな格好になったじゃないか。その装備は、ギルドの初級者セットだね。言ってくれれば防具屋も紹介したんだよ?」


「ただいま帰りましたラーダさん。明日依頼に行く前にと思いまして。実はギルドの受付の方に防具屋を紹介頂いたんですが、色々ありまして……。まあもう少しお金が貯まったら行ってみます」


 食事を取りながらラーダさんに今日の出来事を話すと、セレナさんとは顔見知りで、紹介する防具屋も同じお店だという事が分かった。知る人ぞ知る良質な防具を扱うお店らしい。


 そして、ギルドでのテンプレ展開を話すと、いい勉強になったじゃないかと背を叩かれ、スズネとの話しをするとタカヤも男の子だねぇと揶揄われる。

 本当に、母親のような人だ。


 コックスさんの作った絶品料理を頂き、部屋へと戻り、一人ベッドの上で考える。


 何か大事な事を忘れている。


 防具は買った。冒険に必要な道具も買った。テンプレは後からやってきた。食事も美味しかった……。


 なんだ。なにか。ん〜〜〜!


「あーー!!!」


「魔法だよ!そもそも魔法の資料を探しにギルドにいったんじゃないか!今はまだ夜の19鐘。寝るには早い。そうと決まればギルドに戻ろう!」


 なんだか色々あって、すっかり忘れていたため、ギルドの資料室に走って向かう。

 宿とギルドはすぐ近くなので、非常に便利だ。


 受付にて資料室での閲覧許可を貰い、21鐘までの利用を認められる。


「すみません。魔法に関しての資料を探しているのですが、どこを探せばいいですか?」


 丸メガネ図書委員風の中年男性職員に、場所を聞く。

 どうやら内容さえわかれば、何処に何があるか全て把握している。資料室の生き字引らしい。


 そして魔法の参考書も初心者用の本を含め、3冊探してもらい、早速本を広げた。

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