第3章 入学 第34話

 瀬名が銃砲所持許可申請をすることになった。


 叔母の家に間借りしていることもあって、まずは叔母さんの家族に了解を取らなければならないが、叔母さんのところには子供がなく、瀬名が間借りする話がでたときにも、娘ができたくらいに喜んでくれたので、あっさりと承知してくれた。


 ここでの了解がなければ、銃の所持を諦めるか、アパートに引っ越して一人暮らしをして、後田と柴山と同じように所持することを考えなければならなかった。


  正直なところ、アパート暮らしではアルバイトだけで維持することはできないので、まさにこの問題は学業を続けられるかどうかという大きな壁だった。


 それを叔母があっさりと了承してくれたことには、感謝するしかない。警察官が自宅にやってきたりと、面倒なこともある。


 それでも、姉の娘である瀬名を子供の頃から可愛がっていた叔母にしてみれば、子供のいない分、甘えさせたかったのかも知れない。


 逆に問題となったのは、所持する銃を決める段階だった。


 すでに、初心者教習射撃を修了しているだけに、あとは所持許可申請をすれば良いわけであったが、なかなか銃が決められなかったのだ。


 たまたま立ち寄った銃砲店に来客中だった狩猟者が、若い女性ハンターということもあってか、いろいろと助言してくれたらしい。


 それによると、「シカやイノシシをやるなら、レピーターが良い。ちょうど、俺が使わない銃があるからそれを譲ろう」という話だったようだ。


 使わないからタダで良いと言われたものの、本当に自分が持つのに適しているかどうかもわからない。そんなわけで、銃砲所持許可を受けている男子三人に相談してきたのである。


「ねぇ、どう思う」


「どう思うって、言われても、銃のことはあまり詳しくないしな・・・」


「俺は親父から自動銃を譲ってもらったけれど、その時、レピーターは難しいとか聞いた気がする」とちょっと具体的な発言をしたのは松山だった。


「やっぱ、聞くしかないだろう」


という結論で、四人が相談したのは、山里だった。


「山里さん、狩猟者の方からレピーターを譲ると言われているのですが、どうでしょう」


 瀬名の聞き方は、単刀直入である。


「う~ん。レピーターかぁ。初心者には難しい銃だね」


「そうなんですか」


「決して悪い銃ではないし、世界的にみてもベストセラーとなっている銃だからね」


「でも、初心者向けではないと・・・」


「あぁ、そうなんだ。自動銃は、捕獲現場では回転不良という排きょうと次弾の装填が上手くいかない現象が発生するので回転不良のないレピーターが良いという人は多いけれどね」


「あっ、そう言っていました」


「でも、ここでしっかり考えなければならないのは、レピーターは排きょうと次弾の装填のために先台を引き戻して、さらに元の位置まで戻さなければならないという動作が必要であること。


この動作を行うと、銃口は大きく揺れることになるよね」

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