第2章 迷走 第30話
実家での両親の説得に成功した啓太は、一晩だけ自宅に泊まると、翌日には大学へ戻り研究室の教授に報告していた。
「そうか。ご両親も納得したということか。それなら、私からいうことは何もない。最近の学生の中では、将来研究職として成功しそうな学生だっただけに残念だが、その期待を裏切らないように頑張って欲しい」
「ありがとうございます。ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
一方、柴山と一緒に専門学校への進学を決めた後田の方は、内定していた就職先を断ってということになるだけに、後輩への迷惑という頭の痛い問題にぶつかっていた。
この時期に、内定を辞退するとなると、採用する側にも迷惑をかける。そうなると、今後、後田の大学の後輩たちがその会社を受けるときに不利になる可能性もある。
研究室の教授は、「お前の進路だから、自分で決めればいい」と言ってくれたが、学生課からは「それは困る」と言われてしまい、板挟みとなってしまっていた。
この迷宮から抜け出すにはどうしたら良いのだろうか・・・。
「柴山~、助けてくれ~。これじゃ、お前と一緒に専門学校へ行けない・・・」
「そう言われてもなぁ・・・」
「どうしよう・・・」
社会経験のない学生二人が頭を絞っても良い解決策などみつかるはずもない。教授に相談しようにも、「お前が決めろ」と言われてしまっている。
「なぁ、山里さんならどうするかなぁ・・・」
「そうだなぁ」
「あの人なら、どんな風に考えて、解決するのかなぁ」
「どうせなら、甘えて聞いてみようか」
「えぇ~、そこまで頼っちゃ申し訳ないよ」
「そうかも知れないけれど、学校に行けなくなっちゃうよ~」
もう、駄菓子屋でお菓子を買ってもらえないって駄々をこねている子供と同じである。かといって、名案があるわけでもなく、仕方なく山里を頼ることにした。
二人から連絡をもらった山里は、ともかく一度詳しく話が聞きたいということで、会ってくれることになった。
「こんにちは。すみません。無理なお願いをしてしまって・・・」
「まぁ、まずは話しを聞かせて」
「はい。実は、株式会社丸山調査っていうアセスメント会社へ就職が内定していて、この学校に行くには、そこへ断りの連絡をしないとならないのですが、内定をこの時期に断ると後輩たちに迷惑が掛かると学生課から怒られちゃって・・・。どうしたらよいものかと」
「なるほどね。それは、学生課の人の言うのも無理はないね。株式会社丸山調査なら、うちの会社とも取引があるから、知り合いがいないわけじゃないから、ちょっと待って」
山里が席を離れると、彼の上司らしい人の座席へ行って、なにやら相談をしている様子であった。
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