『8』 魅了

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「四方面 美景さんについて、聞かせてもらえませんか?」


「ビッケ……。四方面くんのことね。彼はハカナキプロダクション所属の俳優。この後の舞台の共演者の一人よ。今日は舞台の前に少し時間が出来たから、甘いものでも食べようかと思って」

 ふと、彼女が唇を動かして口紅を整えた仕草が気になって、つい聞いてしまった。

「綺麗な口紅ですね。あっ、すみません、つい」

「いいえ。私もこの口紅の色、お気に入りなの。さっき四方面くんにもらってね」

「そうなんですか」

「えぇ、まだ日本には出回っていない新作ですって。この後の舞台にも付けていこうかなって。ね、キレイ?」

「お、お綺麗です」

 艶やかな唇の、柔らかさが際立っていた。

 透き通るほどの透明感と、色気ある存在感とが共存した、魅惑的な色だ。不思議な赤い色のラメが眩しい。

「ふふ。ありがとう。舞台は一期一会の一発勝負だから。一目で観客を魅了しないとね。探偵さんも、よかったら舞台、今度見てみてくださいね」

「はい。ぜひとも」

 この後見に行くのがとても楽しみだった。



 手がかりC『新作ルージュ』を入手。

 手がかり番号Cに『15』と記入。



「そういえば、ダンゴを食べた後なのに、口紅がまったく乱れていませんね。食事制限をしていたあなたは、食べるふりをしてダンゴを杏子さんにあげていたのでは?」

「残念でした。ダンゴを食べたあと、トイレに行ってつけ直してきたの。鏡の前でバッチリ塗ったから、キレイでしょう? それにしても、美味しかったわ。もうひと皿食べようかしら」



 ▶手がかりFを持っている場合、『8』+手がかり番号Fのページへ


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