運命の相手が自分のことを嫌っているクラスメイトだった話。
リン
俺の運命がバグった話。
『1-B。
ーー呆然。俺はその大々的な
しかし、そこでの言葉は紛れもない現実であり、今後俺の……。ひいては
とは言え、その発表に俺は呆然としてしまっていたのだが、もう一人の相手。クラスでもイケイケな女子である
「はあ!?嘘でしょ!AIちゃん、それマジで言ってんの?あたしの運命の相手が……。
などと言って、教室の後ろの方にいた小川は俺の事を指差し、『ありえない。マジありえないから。』と本気で嫌そうな顔で顔を顰めながら、AIちゃんの発表会に対して、取り巻きと一緒にぐちぐちと文句を言っている。
そして俺は、そんな女子たちのAIによる運命の相手の発表に対する文句の数々を聞いて、ようやくその正気を取り戻した。
「(いやいやいや!俺の方こそ嘘だろ!?俺と小川が運命の相手?ないないない!マジでないって!もしあったとしても、因縁の相手とかそんな感じの間違いだろ……。)」
どうしてこんな事になってしまったのか?
それはこの話の1時間程前。新しく高校に入学してから2ヶ月後の今日にまで遡る。
ーーー1-B教室にてーーー
「いやー、待ちに待ったこの日がきたな!太一!お前も楽しみにしてたんだろ?AIちゃんがする
「えっ?あっ、ああ……。何かこの学校独自で行ってるAI発表?……お、俺がそんなの気にする訳ないだろ。な、何言ってんだ?」
この頃のジメジメとした湿気と天気に辟易としていた今日この頃。俺、
たしかに今日は俺にとっても
高校入学から早2ヶ月。今日はもしかすると自分の
すると、そのようにキョドった様子の俺を見た直輝は、バシバシと俺の肩を叩きながら『嘘つけ!』と言い、すぐさま俺の言葉が嘘であると一方的に決めつける。
「いやいや、お前メッチャ意識してたじゃん。入学してからすぐにAIちゃんによる運命の相手の発表について調べてたし……。なによりも隣のクラスの
まあ……。実際には遠くから眺めるだけで特に何もしてなかったけども……。」
「ちょっ!おま……。な、何でその事を知って?て、ていうか……。大橋さんは別に関係ないって!俺はただ、運命の相手を事前に知れるっていう『AIによる運命との相手のマッチング』のシステム自体に興味があっただけで……。俺がその運命の相手が誰なのか気になってるとか、そういう事では……。」
そして、直輝の口から思わぬ名前が出た事に酷く動揺してしまったが、何とか平静を装いどうにか誤魔化そうと試みた俺は、そこから畳みかけるようにして、俺の気になる人の話から『AIによる運命の相手のマッチング』の方へと徐々に話を逸らしていく。
「で、でもさ!何かすごいよな!AIによってその人の運命の相手が分かるってさ!聞く所によると……。そのマッチングで選ばれた男女って、そのまま付き合って結婚まで行く確率がほとんど100%に近い9割位の高確率なんだって!しかも、過去にまで遡って相手が表示されるっていうし……。自分でも意外な相手とかが出てきそうだから、な、何だかそこら辺もドキドキして面白そうだよな!」
「はあ……。誤魔化すのが下手な奴め。そんないきなり早口になってもバレバレ…って。まあ、それはいっか。そうだなぁ……。普通に考えてAIによって相手が決まるってなんだよって正直思うけど、何かその……。少子化対策?だっけ。それのために運命の相手をあらかじめ知らせておいて、それでそのカップリングを有無を言わさずくっつけてるって考えると……。まあ、それはそれでありなんじゃないかって俺は思うかなぁ。」
そう……。このAIによる運命の相手の選択はただの中高生のお遊びなどではないのだ。これはれっきとした政府による、
だから、直輝の言う通りの
「(確かその相手同士可能な限り同じ環境にさせるんだったよな。クラスが違うなら、どちらかを片方のクラスに移すっていう形で。
しかも、そもそも学校が違ったり、住んでる場所が違ったら、政府がその負担を全部負う形で引っ越しさせるか、その相手のみを政府負担の寮か何かに住ませるって言うんだから、その本気度が色々とすごいんだよな。この政策に対する徹底ぶりが……。)」
しかも、その政策はそれだけで終わるものはなく、その最たる
これはこの政策によるカップリングの成功率の高さに直結すると言われている目玉の政策であり、学校の監修する下ではあるが、その相手の異性との共同の寮生活を(特別な事情がある場合を除いて)行う事になるのだ。
となるとやはり、学校監修とは言え年頃の男女が一つ屋根の下となると、それはイヤでも相手の事を意識せざるを得ないだろう。そうなれば目論見通り、なんだかんだあってその二人が付き合いだして……。ゆくゆくは、そのまま2人は
すると、俺が少し黙っって考え事をしたのを何か勘違いしたのか、直輝は「まあ、心配すんなって!」と言って、俺の肩をバンバンと叩きながら謎の励ましをしてくる。
「確か聞いた話によると……。大橋さん、誰とも付き合ってないらしいぞ?あんなに美人で男女問わず人気があるのにな。
まあ詳しい話は聞いていないが……。今は想い人もいないらしいし、もしかするとお前にもワンチャンがあるかもよ?」
「い、いや、直輝が何を言ってるのか分からないけど……。お、俺には関係ない話だし。
でも……。そうなんだ。大橋さん今は誰とも付き合ってないんだ……。」
「まっ!そんな感じだし……。かなり低い確率だとは思うが、お前が大橋さんの運命の相手の可能性も無きにしも非ずって事で……。とにかく、希望は捨てるなって所だな!」
そうして、直輝は無駄に爽やかな笑顔でそう俺に言い終えると、朝から宿題のやり残しがあると言ってさっさと立ち去って行く。
そして、その帰りついでに他のクラスメイトたちから男女問わず挨拶されて、それに対しにこやかに受け答えする様は……。まさしく、クラスの人気者と言った所だろう。
「(やっぱ、直輝はイケメンだしすごい人気者だなぁ。俺は昔からの幼馴染だから気軽に声を掛けれるけど……。そうじゃなかったら、どうだったか分からないよなぁ。)」
元々小学生低学年の頃は直輝も今のように友達が多い方ではなかったのだ。いつも俺と一緒にいて、あまり人と話すのが得意じゃない……。そう。まさに今の俺のように。
しかし、中学に入った頃位からだろうか?
それまで、あんまり人と関わろうとしていなかったあいつが、いつの間にか、男女問わず色んな奴と話すようになっていったのは。
しかもそれには、とても分かりやすい。明確な社交的になった理由があって……。
「(分かりきった事だけど……。直輝が普通に女子からモテだしたからだよな。小学校の頃も数回程告白されてるのは知ってたけど、中学からはそれが段違いに増えたからなぁ。
しかもそれに比例するようにして、男子たちも露骨に直輝に対する態度を変えたしな。モテる奴には楯突かないっていうか、女子に嫌われないように必死という……。いかにも男子中学生って感じの理由で。)」
そして、そんな風に下心を隠さないで擦り寄る男子たちと、度重なる女子たちからの告白や日常会話などでコミュ力が日に日に磨かれていき、次第にコミュ力の塊のような今の直輝になったという訳である。
こんな風に言ってしまえば、イケメンじゃない俺の僻みみたいになってしまうが……。
俺も少しはそういう環境で、そういうルックスの人間であれば、直輝のように陽キャの仲間入り……。とまでは言わないが、今よりはもっと社交的になっていたと思う。
まあ、そんな仮定に意味なんてないが。
すると、ぼんやりと直輝の後ろ姿を眺めていた俺の横を、ガンッ!と一人の女子がこちらの席に当たりつつ、通り過ぎて……。
ーー次話へと続く。ーー
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