12.10 田原均くん

「あと池辻くん、こういうのはちゃんとしようよ。なんかこう、私たちこういうなし崩しにくっつくのばっかりじゃない? 少しは……ぐへ」


 ええいまだるっこしい、と言いながら小月さんの背中を足で踏んでぐりぐりして潰しにかかる日向さん。


「これでどう、池辻くん?」


「もうちょっと下」


「下? 男の子はおっぱいがあたったほうが嬉しいんじゃないの? ひっくり返してお尻くっつけるの?」


「もちろんおっぱいも好き。でも今はおなか。おなかがいい」


「池辻くん……。やっぱりちょっと特殊だよね? 千穂のおなかをくっつければいいのね?」


 しばらくは日向さんの脚攻撃に体を湾曲させて耐えていた小月さんだったが、ほどなくぺちゃっと倒れた。

 それでもなんとかおなかがくっつかないように、おなかのあたりはぎりぎり空中に残す小月さん。

 俺がおなか、って言ったせいでぎりぎりおなかがくっつかないようにしているだけ。もうおっぱいはべっちょりくっついてるけど気にしている余裕はなさそう。待て、『千穂ちゃん』もうちょっと我慢だ。小月さんのおなかが来るまで我慢してくれ。


「奈美ちゃん、ほんとやめて。ダイエット! 今度ちゃんとダイエットするから今はやめて」


「小月さんはそんなことしなくても十分細いってば。というか、別に細くなくていい」


「ほら、池辻くんもこう言っているし」


 最後ぎぇ、と悲鳴を上げて小月さんが潰れた。日向さんが背中ぐりぐりしてくれるので小月さんの暖かいお腹があたって幸せ。

 

 まあ俺と小月さんのこういう幸せな時間は長続きしない体質になんだよね。いつも通り小月さんが俺の股でちっちゃくなった。


 うわ、ついながされちゃったけど小月さんめっちゃ怒ってる……。調子にのりすぎた。


 一方、日向さんは猛ダッシュでPCの前に戻る。


 なんだろ。さっきのゲーム気にしてるのかな。

 もう死んでしばらくたっちゃったし、逆転は難しいと思うけど。

 あ。なんか落ち込んでる。やっぱり負け確定したのかな。


「だめだったかー」


「なにが」


「千穂が池辻くんとこでちっちゃくなったら、ゲーム内のひめっちも回収できるかな、と思って」


「……」


 無理でしょ。日向さん美人なのになぁ。相変わらずいろいろとおかしい。


「万一戻れたとしても、チートとかバグ扱いになって無効じゃない?」


「それもそうだね……」


「今日はこれでお開きにしようか」


「うん。お疲れ様」


 綺麗にまとまったところで一件落着。


「あー、これこれ。なにまとめようとしてるの。二人とも正座!」


 ごまかし損ねた。

 小月さんがご立腹である。

 

 わりと素直にベッドの隅に正座する日向さん。

 俺も同じく正座。

 俺の体が起きたので、仰向けにひっくり返ってわたわたする小月さん。可愛い


「やっぱり池辻くんは寝たままでいい!」


 お許しが出たので元の態勢に戻る。


 ひととおり不満を言った後、要求を突きつける小月さん。

 

「まず池辻くん。なんかこう、しょうがないんだ、みたいにえっちなことするのは禁止です。分かるでしょ? もうちょっとこう、ちゃんと正面からお願いします」


「はい」


 心当たりがありすぎるので素直に承諾する俺。若干セクハラ親父みたいになってた部分は否めないしな。少し反省しよう。今度はもっと雰囲気のあるかんじで触らせてもらおう。小月さんのおなか。


「あと奈美ちゃん。罰として田原(たわら)均(ひとし)くんに会いに行くことを命じます」


「え」

「え」


 びっくりして日向さんと一緒に聞き返してしまう。

 タワラヒトシって言った? 誰?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る