11.2 社会的なNGワード

「栄太。それなに」


 固まった表情で小月さんを指さす母。


「なんのこと?」


 我ながら言い逃れにすらなっていない。


「だからそれ。よくできてるけど人形? でいいの?」

 

 俺の苦し紛れのパリィが通じず、ノータイムで次の攻撃に入る母。


 しょうがない。小月さんに習おう。わざわざ言ってまわる必要はないが、ばれた時は正直に説明して堂々としていればいいのだ。

 

「紹介するよ。クラスメイトの小月千穂さん」


 立ち位置とかサイズとかすっとばして簡潔に紹介。

 俺と母、ふたりの視線を浴びる小月さんだが、相変わらず寝っ転がってかりかりと宿題をやっている。


「……小月さん?」


 宿題を片付けるのに夢中だった小月さんは俺以上にまわりが見えていなかった。

 ようやく母の存在に気付く。


 ぱたぱたさせていた足が止まり、あごが左手から離れ、口が半開きになっている。可愛い。


 状況を理解したのか、身体を起こして正座。

  

「小月千穂です。お邪魔してます」


 多分頭のなかぐるぐるだと思うけど、どうにか母に挨拶をする小月さん。


「栄太の母です。……どういうこと?」


 説明か。うん。何からどう話せばいいんだ。


「あの! せ、せせんじつより、え、栄太さんとお付き合いさせて頂くことになりまして」


 へらっと笑う母。


「またまた。栄太に彼女なんて」


「そんな! 栄太さん学校でも女の子に人気なんです」


「……ほんとに?」


 自分の息子を一切信用する気がない母。


「……すみません、盛りました。でも私はいいと思ってるんです!」


 可愛い嘘はよくつくけど、こういう所は正直な小月さん。


「そう。あなたのような、その、何食べたらそんな育つのかよくわからない人が栄太の彼女、っていうのは信じられないけど。仲良くしてやってね」


「はい! こちらこそよろひくお願いします!」


 噛んだ。

 がちがちに緊張している小月さん。

 可愛い。


「栄太、昨日寝坊したでしょ。で、今日心配して様子見に来たの。そうしたらノックしても反応ないから。こりゃ寝てるな、って起こしてあげようと思っただけ。じゃあ私もお父さんももう出るから、戸締まり忘れないでね」


「それだけ!?」


「なに。なんか忘れ物?」


「小月さんがなんでこんな小さいのかとか、気にならない?」


「だってあなた昔からちっちゃい子好きでしょう。というか本当にこの子が好きってことでいいのよね? 随分と発育いいけど」


「そうだけど」


「こんなノーマルな彼女なら超大歓迎よ。栄太の好きな『膨らみかけ』とか『ランドセルを背負ったまま』とかいう社会的なNGワードが入ってないじゃない」


 だからそれは誤解だ。俺はロリコンじゃない。

 というかこのサイズの小月さんはノーマルと言っていいなのかな……。

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