8.2 そ、そろそろ私帰ろっかな

 そのまま小月さんと二人で動画鑑賞。

 

『ど、どう?』


 画面にちょっと服のはだけた小月さんが映っている。ついちらっと小月さんの様子を伺うと、俺の顔をじーっと見ていた。さっきからずっと見てたのかな。動画に夢中で気付かなかった。ちょっと恥ずかしい。


「もっとぐいってやったつもりだったけど、動画で見るとそれほどでもなかったね」


「十分刺激的だよ」

 

「池辻くん、どう?」


「どうって?」


「こ、興奮する?」


「……するよ。ごめん」


「なんで謝るの」


「怒ってるんじゃないかと思って」


「そんなことないよ。ふふ、良かった」


 動画を止めて小月さんの頭をさわさわ撫でる。機嫌の直った小月さんがくすぐったそうにする。


「池辻くん、指出して」


 言われるがままに右手の人差し指を小月さんに出す。

 小月さんは小さな手でその指先を捕まえてしばらくさわさわした後、顔を近づけてぺろってなめた。

 

「小月さん!?」


「へへ。分かった?」


「分かるよ。なんか指舐められた」


「だめ?」


「だめじゃない」


 なんだこの人。可愛すぎて死ぬ。


「そっか。もう一回いい?」


「も、もちろん」


 どす。

 今度はパンチされた。


「いたいー」


「あれ? ごめん、痛かった?」


「めっちゃ痛いー。これは折れてるかもしれないー」


 もちろんミニチュアサイズの小月さんパンチだし、小月さんも本気で叩いているわけじゃない。叩いたな、ってのが分かった程度の刺激。

 

「きゃーたいへん!」


「小月さん、早く治して」


「どうすればいいの?」


「さっきの」


「分かった!」


 もう一回俺の指をパンチする小月さん。


「違う、その前」


「舐めてほしいの?」


「ああ」


「ふふ。池辻くんのえっち」


「怪我を治すためだから」


「しょうがないなぁ」


 とかなんとか2人でやってたらスマホに通知が来た。


「あれ、池辻くんなんか来たよ。スマホ」

 

「いいよ、今はそんなの」


 一応ちらっと見ると、日向さんのメッセージだった。


「日向さんだ」


 さらっと確認するとなんかすごい長文が来てる。縦長のスマホ画面いっぱいに文字が埋まってる。これ、吹き出しに入ってる意味ないな。なにか間違えて送っちゃったのかな。


「なんだろね。……あれ、小月さん?」


「そ、そろそろ私帰ろっかな。じゃあね、池辻くんまた明日!」


「いや、そんな自由に帰れないでしょ」


「だったらちょっと池辻くんあっち向いてて。とにかく帰る」


「なにそんな慌ててるの?」


「ほら、池辻くんは奈美ちゃんの相手しなきゃ。ああ、こういう時の奈美ちゃんは1分以上空けちゃだめなの! スタンプでもなんでもいいから返して!」


 わけもわからないまま慌ててスタンプ。


『こんばんは』


 我ながらどうしようもなくひねりのないスタンプを送った。

 すぐに既読がつく。

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