第126話 初詣

朝、目が覚めると、先輩はすでに起きていて、

僕の髪を梳きながら、

僕の寝顔を愛おしそうに眺めていた。


先輩と目が合うと、

僕は一気に恥ずかしさがこみあげてきて、

先輩の目を直視することが出来なかった。


「おはよう」


先輩の声に、


「あ、おはようございます」


と、僕の声が上ずった。


「なんだ、緊張してるのか?」


「……」


「ハハハ、お前のそんなとこ

凄い可愛いよな。

なんだ? 今になって恥ずかしいのか?」


「だって、昨夜の事を考えるとそりゃ

恥ずかしいし、緊張しますよ!

なんだか僕、凄い事になってましたよね?

先輩引いてません?」


「ば~か!

あんな可愛いかった要は初めてだよ。

お前、あんな顔、誰にも見せるなよ?」


「いや~ 先輩、

僕、一体どんな顔してたんですかー?!」


「ハハハ、こんな顔だよ!」


そう言って先輩は

携帯で取った僕の寝顔を見せた。


寝顔よりも驚いたのは、

僕の露わになった上半身はとても舐めまかしく、

先輩に愛された跡がここ、あちらに付いていた。


「ギャ~ 先輩、それ、消してください!

僕、完全にアウトですよ!

それ、やった後ですって

直ぐに分かるじゃないですか~!」


僕は先輩の携帯を取ろうとしたけど、

先輩はヒョイヒョイと僕を避けて、

携帯を自分のカバンにしまった。


何時までも諦めずに奪い取ろうとする携帯をよそに、

先輩は軽々と僕にキスをすると、


「ほら、朝食が出来てるみたいだぞ。

お昼にはチェックアウトしないといけないから、

朝食を食べたら帰る前に

もう一風呂浴びるぞ」


そう言って食堂に向かって歩き出した。

僕は先輩の後を付いて歩きながら


「あ~あ、 先輩の至高のアイテムを使った必殺技、

とうとう披露することできませんでしたね。

僕、楽しみにしてたのに!」


と、僕がふざけた様に笑ってそう言うと、

先輩は僕の鼻を摘んで、


「また次があるさ」


そう言って、不敵にニヤッと笑って朝食へと急いだ。


その後僕達は、純粋にもう一風呂楽しんだ後、

電車の時間に合わせて、

少し早めにチェックアウトした。


帰りの電車は凄く疲れていて、

僕は先輩に寄り掛かって

ウトウトとしていた。


僕達の下車駅のアナウンスがされると、

先輩が易しく僕を起こしてくれた。


先輩と過ごした時間は、

瞬きの様に早かった。


クリスマスが来るのはあんなに、

あんなに永遠のように長ったのに、

振り返ってみると、

クリスマスを待つ間がワクワク、ドキドキして

一番楽しかったかもしれない。


でも、先輩との旅行から家に帰ると、

急激に現実に引き戻された。


「あ~ あまりにも余韻に浸りすぎて、

先輩にクリスマスプレゼント渡すの忘れた!」


気付いた時には後の祭りで、

僕は次、何時先輩に会えるのか分からなかった。


でも、僕の中にはまだ先輩の感覚が

ハッキリと残っていた。


それがとても特別で、

僕は先輩に愛された僕の体がとても愛おしかった。


でも、先輩が宣言した通り、

僕は冬休みの間、先輩に会う事はかなわなかった。


でも、矢野先輩や、青木君、奥野さんと一緒に

初詣に行くことが出来た。


今まで朝にしか初詣に行ったことがなっかた

青木君や奥野さんのリクエストを受けて、

僕達は夜中を過ぎて、近くの神社まで行った。


奥野さんは、青木君が家まで迎えに行って、

そのまま皆で公園で落ち合った。


除夜の鐘が鳴り始め、

ゆく年くる年が始まる頃、

僕はマンションの下に降りて来た。


マンションの入り口には、

懐かしい知った顔が指に息を吐きかけながら

立っている姿が見受けられた。


「あれ? 矢野先輩!

ここまで迎えに来てくれたんですか?」


僕は走って先輩の所まで近ずいて行った。


「久しぶりだね~

10日ぶりくらい?」


「そうですね、

終業式以来だからそうなりますね。

まずは明けましておめでとうございます!」


「おめでとう!

で? クリスマスにはちゃんと

裕也と旅行には行けたんでしょう?」


「はい!

先輩、ありがとうございました。

とても楽しかったです!」


「で? あっちの方はどうだったの?

何か新しい情報はあるの?」


「うわ~ 先輩、それ、

本気で聞きますか~?」


僕はそう言って先輩の背中を

バシバシと叩いた。


「先輩、冷たいですよ!

どれくらいここに立っていたんですか?」


「いや、そんなに長くは無いよ。

でも今夜はちょっと冷えるね」


そう言って今まで息を吐きかけていた

手をポケットの中に入れた。

そして僕に腕を差し出すと、


「どうぞ」


と言って僕が腕を組むよう誘ってくれた。

なので僕は先輩の腕を取って歩き出した。


「先輩はクリスマス、

どうしていたんですか?

僕、先輩にお土産あるんですよ。

でも今日は持ってきませんでした。

今度渡しますね」


「ハハ、ありがとう。

で、裕也との旅行はどうだったの?

何か進展あった?」


僕が真っ赤になっていると、


「ハハハ、そうなんだね、

分かったよ」


と先輩が笑いながら言った。


「え~ 何が分かったんですか!

何か佐々木先輩から聞いたんですか?!

先輩!」


矢野先輩は僕のドギマギする態度に、

ただ笑うばかりだった。


「あ、青木く~ん、

奥野さ~ん!

こっちだよ」


公園に入るなり、直ぐに

青木君と奥野さんを見つけた。


「あ~ 赤城君、

あけましておめでとう!

矢野先輩もおめでとうございます!

相変わらず仲いいですね~

これでカップルじゃないなんて詐欺ですよね~

でも今日は大学合格祈願、一杯しましょうね!」


「ハハハ、ありがとう。

奥野さんは何時も元気だね。

大丈夫?

眠くない?」


先輩がそう言うと、


「私、勉強は出来ないけど、

夜更かしは得意なんですよ!」


と、奥野さんは得意げに返していた。


「瞳、それ、何の自慢にもならないから。

お前、結構俺とラインしながら寝落ちしてるじゃないか。

それってまだ夜中にもなってないと思ったが……」


青木君がそう言うと、奥野さんは、


「だって、猛の返事直ぐに返って来ないんだもん!」


とブウブウ言っていた。


矢野先輩は二人の間に入って、


「まあ、まあ、今日はめでたい席なんだから、

仲良く、仲良く。

ほら、多分、人出多いだろうから早く行こうか?」


そう言って僕達は神社目指して歩き出した。


神社の近くまで来ると、先輩が言った様に、

既に沢山の人出があった。


「うわ~ 本殿まで付くのに

どれくらいかかるかな~?」


「ほら、猛、あなた背高いんだから、

ちょと周り見まわしてよ!」


そう奥野さんが言うと、

青木君はちょっと背伸びをして、辺りを見回した。


「まあ、他にも背ぇ高い奴ゴロゴロいるから、

そんな草原見渡すようにはいかないぞ?」


そう言った後、青木君は一所に目を止めて、


「あれ? あれは……」


と言った。


「誰か知ってる人でも居るんですか?」


僕がそう尋ねると、ちょっと戸惑った様にして、

もう一度その場所を見直すと、


「あ、いや、そう思ったんだが違う人だったみたい」


そう言って目をそらした。


怪しい……


そう思って青木君の目をやった方を見たけど、

余りにもの人で、僕には全然その先は見えなかった。


人は多いけど、進むのも割と早かった。

色々と話をしているうちに、

僕達は本堂へと着いた。


皆で祈願をしてそれからおみくじを引こうと言う事になった。

そして、お守りや、破魔矢なども買って行こうと言う事になり、

売り場へと向かって行った。


そこでばったりと、佐々木先輩の腕に

しっかりと絡み付いた

長瀬先輩と佐々木先輩に鉢合った。

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