第61話 ランチタイム

「赤城く~ん、

一緒にお昼どう?」


やっと午前の部を終えた時に、

奥野さんと青木君が

僕とランチを一緒にと誘いに来た。


「あ、ありがとうございます。

実は急に僕の両親が押しかけてきまして……」


「お、お前のお袋も居るのか?」


「何、何?

赤城君のお母さん来てるの?」


奥野さんと青木君が顔を見合わせて

目をキラキラとさせた。


「ねえ、ねえ、私達もお邪魔して良い?

是非、是非、赤城君の

ご両親に会いたい~」


「そうだな、お前の面白い親父とも

また話してみたいしな」


青木君も、奥野さんも僕の

両親に会う事にノリノリである。


「ハハハ、良いですよ。

矢野先輩も、佐々木先輩も来ますので、

是非、奥野さんも、青木君も来てください」


そう言って僕は二人と、

保護者用のテントへと歩いて行った。


途中で佐々木先輩の居る

生徒会役員席に寄って、

佐々木先輩を拾って行った。


「チースッ!

先輩、俺らも一緒にお昼します~」


そう言って青木君が

佐々木先輩に挨拶した。


「お~ 青木。

お前要と知り合いだったんだよな?」


「ですよ~

同じクラスの前と後ろの席で~す」


「で、こちらが最近できたと言う

ガールフレンドか?」


そう言って佐々木先輩が奥野さんの方を見た。


青木君は照れて頭を掻いていたけど、


「よろしくお願いしま~す。

奥野瞳です!

先輩の事は良く猛から聞いてま~す」


奥野さんはいつもと同じように

元気にあいさつをした。


「お前、変な事いってないだろうな?」

そう佐々木先輩が青木君に問いかけると、


「大丈夫ですよ、先輩。

猛って、先輩の信者ですからね~

もう、先輩の凄いところを

何時も褒めまくってますよ」

と、奥野さんが咄嗟に答えた。


「それにしても先輩って、

いつ赤城君と仲良くなったんですか?

矢野先輩だったらクラブの先輩だし、

しょっちゅう赤城君に会いに来てるから

分かるんですけど……

先輩とはあまり接触を

想像できないから……」


“ひゃ~ 奥野さん!

それ、 振らないで下さ~い!”


僕は心の中で祈った。


「俺が要と知り合いだったら変か?」


「そうですね~

余り接点がないから不思議だな~って……

ねぇ、猛もそう思ってたでしょう?」


「あ~ まぁな、

もしかして、要も先輩の魅力にやられたとか?

惚れちゃったりして! 

ハハハ 先輩、かっこいいしな!」


恐らく赤城君は冗談で言ったんだと思うけど、

僕は顔がカーッと赤くなっていくのを止められなかった。


赤城君と奥野さんはびっくりしたように

僕の顔を覗き込んで、


「えっ? マジか/マジ?!」

とびっくりしていた。


僕はとっさに否定して、


「そんなんじゃありませんよ。

確かに先輩はかっこいいとは思いますが……

そんな面と向かって~」


と青木君の背中をバシバシと叩いて答えた。


「いや~ん、びっくり!

私、てっきり赤城君は

矢野先輩とデキてると思ってたのに!

凄い大発見!」


奥野さんはまだ興奮冷めやらぬだ。


「違いますよ、

そんな~

佐々木先輩もなんとかい言って下さいよ!」


僕が佐々木先輩に話を振ると、


「要と浩二って二人から見て、

そんなデキてるような雰囲気があるのか?」


と尋ね始めた。


「そりゃあ、見ているこっちが

恥ずかしくなるくらいベタベタ、

イチャイチャですよ。

それで付き合って無いって言うんだから、

私てっきり両思いで、

ただ単にお互い、

探り合ってるだけなのかと思ってましたもん!

ねえ、猛もそう思うよね?」


「あ~、 確かに矢野先輩って優しいけど

要に対する態度は他の人とは違うよな」


「そうよね~ どこが違うのかって言われると

答えられないけど、

赤城君も矢野先輩には自分さらけ出してるし……

矢野先輩も赤城君には甘々だし……

どっからどう見てもカップルよね~」


「二人って見た感じ……

本当にそうなのか?」


先輩が少しショックを受けたようにして尋ねた。


「二人ともやめてください!

矢野先輩とは本当にそんなんじゃないですから!」


僕は二人の会話に慌てて割って入った。


これで佐々木先輩に嫌われてしまったらどうしよう?

僕と番になりたいと思った事が

間違いだったと思われたらどうしよう……

もう話し掛けてくれなかったらどうしよう……

やっぱり僕は矢野先輩と

居た方が良いと思われたどうしよう……


そう思って、僕は自分の思った事にびっくりした。

僕は僕が思っているよりも

佐々木先輩に惹かれているようだ。


感の良い奥野さんも

それに気付いたのか、僕に耳打ちをして、


「ねえ、佐々木先輩って、

赤城君の事……好きなの?

もしかして告白された事……

あるとか?」


奥野さんが気まずそうに、そう聞いてきたので、

僕はあちゃ~と思ってしまった。


また、僕のそんな態度に、

奥野さんは自分の質問に自分で答えを出していた。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る