第51話 クラブ見学

僕はソワソワしながら体育館の裏手に回っていた。

こんなに沢山の女子が体育館周りに居るとは思いもしなった。

スポーツをしている男子は佐々木先輩にかかわらず、ある程度はモテるようだ。

ちょっと耳を澄ますと、


「今日の矢口先輩カッコイイ~」

とか、

「上野先輩、今日はキレッキレ!」

だとか、

「中山先輩お茶目~」

等など、一人一人が違う先輩を応援している。


体育館はローテーションが組まれているらしく、

現在使用しているのは男女のバスケ部。


コートを割った真ん中のスペースではバレー部男子がストレッチをしたりと、

準備運動っぽい事をしていた。


体育祭準備が全て終わった僕の放課後は時間が空き、

今日はこっそりと佐々木先輩の部活動の見学に来ていた。


もちろんそんなことを佐々木先輩は知らないし、

来いとも言われていない。


僕は体育館裏の窓から、そっと中を覗き込んだ。

先輩はマネージャーらしき人と、何か話をしていた。


何だか凄く親しそう……

「女子のマネージャーってホントにいるんだ~」

何だか胸がモヤモヤとしてきた。


先輩が笑ってる……

マネージャーが先輩の肩をちょっと押して恥ずかしそうにはにかんでる……

心なしか頬もちょっとピンク色のような……

あ、先輩に耳打ちしてる……

何? 大きな声では話せない事?

うわ~ 何故そこで先輩の腕を掴む!

先輩も呑気に笑って無いで、振り払ってよ!


僕は団々とモヤモヤからイライラへと変わって来た。


あれ? あれ?

これって……

俗にいう嫉妬?

僕、女の子に嫉妬?

まさか……

昨日の今日で?


僕はちょっと窓から目線を外して、反対の景色を見た。

そして目の前に立つポプラの木を見上げて、深呼吸した。


心臓は何故がバクバクいっている。


そしてもう一度窓から覗き込むと、目の前に青木君の顔があって、

僕は「ワッ!」と声を上げてしまった。


僕の声に青木君もびっくりしたようで、ビクッとなって一歩引いていた。


「お前こんな体育館裏で何してるんだ?」

「へへへ、え~っと~」

僕はどうにかごまかそうと、ちょっと頭を掻いて目を泳がせた。


「バレー部って女子のマネージャーがいるんですね」

思っても居なかった質問が口から出てきた。

言った後で、おっと~と思った。

恐らく青木君も、その質問にはびっくりしたと思う。

一瞬「え?」と言う様な顔をしてマネージャーの方を見た。


「あ~北田マネか~」

「僕、女子のマネージャーが男子部に居るなんて、

マンガの世界だけかと思っていました」

「そうでもないぞ? 

割かしどこのクラブでもいるんじゃないか?」

「そうなんですか? 

やっぱり男子部の女子マネって好きな人目当てとかで?」

ちょっとドキドキしながら聞いてみた。


青木君は僕の方をジーっと見て、

「何だ? あのマネが気になるのか?」

と聞いた。


「あ、いえ、そういう訳では無いんですけど……」

と両手をブンブン振って否定すると、

「まぁ、大体は当たってるだろうな」

と返事が返って来た。


「え? じゃあ、あの女子マネは誰か目的で……?」


大体答えは分かっていたけど、僕は耳を塞ぎたい気持ちと、

好奇心が混じって聞いてみた。


「バレー部って言ったら……

佐々木先輩か、大沼先輩か、柳瀬先輩と言うところだが、

北田マネは佐々木先輩だろうな」


やっぱりか~と思ってあたふたとしていると、

佐々木先輩と目が合った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る