鍵の話
七辻ヲ歩
「鍵の音」19:54
「おとうさん!」
鍵の開く音がして、りいなは玄関口ののれんを擦り抜ける。母親が明かりをつけるのを仰ぎ、まもなく重い鉄扉のノブが震えて、にこりと優しい父親の目元が向こう側からちらりと覗く。
「お帰りなさい」
「ただいま」
他愛無い両親のやりとりを交互に見遣りながら、りいなは二人の後をついていく。
「りいな、ただいま」
「おかえりなさい! おとうさん!」
りいなの隣に母親が座る。
「鍵の音を聴くと、何をしていても直ぐに玄関に走っていって……」
見上げた母親の口元が震えている。
「嬉しかったんだよな」
父親の手元に、線香が握られた。
「ただ、うまく止まれなかったんだよな」
「おとうさん」
鎮魂の音。りいなは写真の中で笑っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます