第3話 一つ目のパンの代価

氷の湖から 命からがら

無事に引き上げられて、アリスンは涙を浮かべる

「大丈夫…僕がついてる」


油紙に包まれ

ほぼ無事だった御菓子に 拾えたリンゴ…

荷物を腕にして


今度はアリスンの濡れたブーツや靴下を脱がせて


濡れてなかった彼女のショールを

腰のあたりから足先に巻き

それから彼女を背中におぶり急いで慈善院に駆けこんだ…


「大丈夫?」


暖かな毛布に包まれ

ホットミルクを飲むアリスンはうなずき…


か細い声で「有難う」と呟く


僕はそっとアリスンの顔に触れた…

赤い頬、鼻先も少々赤く染まってる

生きてるアリスン


そうだ…彼女は今は

生きてる…


僕はそっと彼女を抱き締めた


ポッケの中の砂時計がカチリと音をたてた…


取り出して砂時計を僕は見つめる


何処からか声がした…


「一つめのパンの代価」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る