第57話 こういう時、人の本音が出るって本当だな!

「い・・・・いけません・・・・そんな・・・・貴重な・・・・ドラゴンの・・・・血でしょ?」


「うっせえ!トカゲの血だ!」


「どうみてもドラ「患者は黙ってろ!」・・・・」


”使うのか?”


「どうやって使うんだ、そう言えば知らんぞ?」


”かけても良い。飲ませても良い・・・・飲ませれば、他の怪我も治ろう。この女、まだまだ怪我が酷いからな”


「よっしゃあ!じゃあ飲め!ほれ飲め!旨いか知らんがどんと飲め!」


だが、そこへ予期せぬ出来事が。


「そ・・・・それがあれば・・・・」


先程逃げた男が、一瞬のスキを突いて、”血”を奪ったのだ。


「ああ!おい!何すんだ!」


「もうローサは大丈夫なんだろ!他の奴に使うぜ!」


「何言ってんだ!目がこの通り治ってねえんだ!それを治すのに使うんだ!よこせ!」


だが、その男は逃げていく。


「シロ!」


”うむ!”


シロが素早く追いかけ、あっという間に追いつく。


「わ・・・・来るな!」


その男が向かった先は、治療を待っている人の方ではなく、魔法陣だった。


『何処へ向かうつもりか知らぬが、それを返してもらおうか!』


「わ・・・・渡すもんか!これがあれば・・・・冒険者なんかやらなくて済むんだ!」


『それが本音か・・・・では、貴様の冒険者生活は今、ここで終わりだ!』


あっという間に男に襲い掛かるシロ。


この階層で立ち往生しているぐらいだから、フェンリルの動きについていけるはずもなく、あっさり組み敷かれる。


『それを大人しく渡せば、それ以上怪我はせぬ。抵抗するなら腕を噛みちぎってでも持っていく。』


「・・・・くそ!畜生!」


男は手にしていた何かを投げた。だが、シロはそれに反応する事なく、男が投げた反対の手にかみつく。


『愚かな・・・・我がそのような事に騙されるはずも無かろうて。』


「うう・・・・いてえええ・・た・・・・助けてくれ!ほら、こ・・・・これだろ!」


血だらけになった腕を何とか動かし、シロの前にそれを差し出す。


『ふん、最初からそうしておればよかったのだ!』


シロはそれを口に銜え、男を蹴り飛ばした。


”ふん!屑が!”


シロはルドメロの所へ戻る。


「何だったんだあいつ・・・・?まあいい。ほれ飲め!」


中々飲もうとしないローサ。


「シャーねえな!ほれ、これで飲めるだろ!」


ルドメロは、ローサの鼻をつまんだ。当然鼻で息ができなくなるわけで、ローサはしばらく我慢したが、息が苦しくなり、口を開けた。


その隙にルドメロは”トカゲドラゴンの血”を口に押し込む。


思わず飲んでしまうローサ。


「ああ・・・・貴重な血が・・・・」


「おいポチ、これどれぐらい飲ませればいいんだ?」


”ほんの少しでよいのではないか?”


「まだかなり残ってっけど、まあいいか?」


暫くして・・・・完全につぶれていた目が、みるみる元に戻っていく。


顔も潰れていたが、元の整った顔立ちに。


暫くして、怪我をしていたのがウソのような状態になる。


「あ・・・・あああ!助かったのですか?・・・・しかし、貴重な血が・・・・なんて事!」


「もういいか?」


「あ、待って!」


「何だよ・・・・エメリナっつったっけ?もうこの女が他の奴を治療できんだろ!」


「その・・・・さっきはすまない・・・・あのバカが、とんでもない事をした!」


「気にすんな。それよりあいつ、腕が血で真っ赤っかだぞ?」


「自業自得だ。放っておく。クランも追放だな。幸いここから地上に出られる。」


「あっそ・・・・ってう・・・・?」


俺様起き上がろうとしたのだが・・・・頭がくらッとして・・・・目の前が突然真っ暗になったぞ?


「あ!危ない!」


何だ?デイフィリアか?

やっぱまだがきんちょだな・・・・もっとこう、バインバインにならんとな・・・・


そこまで考えていた時、ルドメロは気を失った。治療魔法を立て続けに使用したため・・・・しかも2人とも、深い傷を負っていたため・・・・魔力が底をついたのだ。


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