第20話 埋葬

サンジョナ村から逃げ出した俺とキュウ。


「緊急事態で撤退になったが、俺は妻と子がどうなったのか、知らないといけない」


「気持ちは分かるが、あの女は危険だにゃ」

『うむ、レベル1の我では敵うとは思えん』


「死んでも行く」

俺は決意を述べてキュウを見詰める。


「……にゃ」

『……』


「分かったにゃ、潜入して調べるにゃ、取り敢えず近くまで行こうにゃ」

キュウは俺が乗り易い様に伏せた。


俺はキュウに乗って、再度サンジョナ村に向かった。


キュウが低空飛行で周りを警戒しながらゆっくり飛ぶ。


サンジョナ村の近くに着くと、キュウから降りて歩いて行く。


キュウは子猫サイズになって、周りを警戒しながら目の前を飛んでいる。


(大丈夫みたいにゃ、あの女の匂いは無いにゃ)

(良し、村に入ろう)


俺とキュウは頭の中で会話する。

村に入り再度俺の家の跡に向かった。


家の田んぼに近付くと、

(田んぼの中にさっきの不気味な泥人形が3体いるにゃ)


(そいつらが潜んでいるのが、分かるんだね)


(分かるにゃ、ちょっと倒して来るにゃ)


(え? 倒せるの?)


(倒せるにゃ)


(キュウが? マジか!)


(にゃ)


音も無く田んぼに飛んでいくキュウは消えて風になる。田んぼに風が吹き、刀で斬られた様に3つの筋が出来た。


キュウが戻って来た。


(倒したにゃ)


(本当に?)


(ホントにゃ、核みたいなのを斬ったから大丈夫にゃ)


(おお! キュウはふよふよ飛んで、探敵するだけだと思ってた)


(つい最近修得したスキルにゃ)


(おお!ありがとう。良し、妻と子を探すぞ)


(大体場所は分かるにゃ)


(え!)


キュウはハルトの家の跡にふよふよ飛んでいく。


(ここにゃ、この下にゃ)


ハルトはキュウに答えず、キュウの元に走った。


そして、瓦礫を持ち上げようとした時。


『ちょっと待て! 音がするだろう、我に収納すれば良い』


ゲイ・ボルグが話し掛けて来た。


「そうか、収納すれば物音はしないね」


ハルトは瓦礫を上から順にゲイ・ボルグに収納していく。


すると、妻と子の遺体を見つけた。娘を庇う様に、抱き締めたまま俯せになっている妻と、妻にしがみ付いている娘。


ハルトは思わず抱き締めて涙を流していた。


『ハルト、あまり長い間ここにはいられない。妻子を静かな場所に埋葬する為にも、ここを離れよう』

ゲイ・ボルグがハルトに話し掛けた。


「そ、そうだな……」


ハルトは涙を拭いて、妻と娘の亡骸をゲイ・ボルグに収納し立ち上がる。


「行くにゃ」


その後、街から離れた森の中にある、開けた日の当たる場所に妻と娘を埋葬したハルトは、ドーマン王国を出る事にした。


自分の実力を付けて、ゲイ・ボルグを成長させるのだ。そして、飛縁魔に、ドーマン王国に復讐する事を誓い、その牙を研ぎ澄ます為に……。

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