第18話 飛翔
ゲイ・ボルグを手にいれたハルトは、ダンジョンを出る事にした。
「ゲイ・ボルグの力があれば、コボルト兵が何人いても倒せるだろう」
『うむ、任せておけ』
(状況を分かってるのかにゃ?)
『何が来ても倒せるだろう』
「俺が倒すんだけどな」
(そうだにゃ)
ハルトは、持っていた槍と背負っていたバッグをゲイ・ボルグに収納した。手にはゲイ・ボルグだけで身軽になったハルト。
「荷物がなくなっただけで、こんなに軽くなるなんて……」
ちょっとジャンプしたり、フットワークを試したりするハルト。
転移した場所にあった魔方陣に乗って、元の部屋戻り部屋を出ると、倒れて来た壁が音を立てて元に戻った。
ギギギィー、バタン!
ダンジョンの入口に向かって進むハルト。
帰りはゲイ・ボルグの力と、身軽になった身体でモンスター達を蹂躙し、素材をゲイ・ボルグに収納していく。
『ははは、我に貫けぬ物無し!』
「兵士の槍でも刺してたけどね」
(楽勝だにゃ)
俺の周りをふよふよ飛びながら探知し、モンスター達の出現を教えてくれる窮奇のキュウ。
「コボルト兵達はいないな?」
『はっはっは、コボルトなど敵では無いぞ』
(コボルトの匂いはしないにゃ)
ツドイ帝国軍はドーマンに蹂躙されて、既に撤退している事をハルトは知らない。
ダンジョン『聖獣の祠』を出たハルト。
(この後、どうするにゃ)
『うむ、強敵を薙ぎ払い成長するのだ』
「そんな事しないよ、一度家に帰ろうと思っている。町に入れなかったのだ、脱走兵扱いにはならないだろう……、多分。」
『むむ、そうかぁ……』
ハルトは歩き出す。
暫く歩くとキュウが話掛けてきた。
(どのくらい掛かるのかにゃ)
「1か月ぐらいかな?」
(1か月? そんなに掛かるのかにゃ)
「馬車もないし、歩きならそれくらいは掛かるだろうね」
(にゃー、ヤダにゃー!)
「ヤダって言われてもなぁ」
(ハルトを乗せていくにゃ)
「乗せてってキュウが俺を?」
(そうにゃ)
「え? 乗れないでしょ?」
(乗れるにゃ)
と言うとキュウはハルトの目の前に来て、大きくなった。大型の虎サイズ。キュウは虎柄の猫ではなく、翼が生えている虎だった。
驚愕するハルト。
「お、大きくなれるんだ!」
「さあ、乗ってにゃ」
「え! 喋ってるし、と言うか虎なのに、『にゃ』ってなんだよ?」
「口癖にゃ」
「色々おかしいけど……、まあ、いいか。妻と子供も気になるし、宜しく頼むよ」
「了解にゃ」
ハルトがキュウに股がると、キュウは駆け出す。そして、空中も駆けてフワッと言う感覚の後飛翔した。
「お、おお! 飛行機が離陸した時の感覚だ。すげぇ、空を飛んでるじゃん」
この世界に来て初めて空から見下ろした風景に心を奪われながら、最短距離で自分が住んでいた村に向かうハルトとキュウだった。
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