第16話 神槍ゲイ・ボルグ
窮奇のキュウに案内されたダンジョンの一室。
土壁に囲まれた、家具も何も無い、建造中のマンションのコンクリート打ちっぱなっしの様な部屋だ。
「なーんにも無いぞ」
(うーん、この辺りに何かありそう何だけどにゃ)
正面奥の壁の前をキュウがふよふよ飛び回る。
「ただの壁みたいだぞ、扉も無いしボタンの様な仕掛けも見当たらない」
ハルトも壁を触ったり叩いたりして調べるが、手掛かりは見つからない。
(なんかあるにゃ!)
キュウが奥の壁に近い天井部分に、何か見つけたらしい。
ハルトがしたから見ると土壁に混ざったただの石に見えるが……。
キュッ!
(ポチッとにゃ)
キュウがその石に見えるボタンを押すと……。
ギィーッ……。
正面の壁が倒れて来たのだ。
「あ!これヤバいヤツだ!」
ハルトは驚くが冷静に対応を考える。
「逃げろおおおおおお!」
慌てて入口に走るハルトとキュウ。
バタン!!!!
土壁が倒れて土煙があがる。
(何の魔方陣かにゃ?)
「転移系の魔方陣じゃないか?」
この部屋には何も無いから、何かある部屋に飛ばすのだろう。
(取り敢えず真ん中に行くにゃ)
「分かった」
2人は魔方陣の中心に歩いて移動した。
(聖力を流すにゃ)
「聖力?」
(魔力みたいなモノにゃ)
「ふぅん」
キュウから淡い光の神聖な何かが溢れ、魔方陣に吸い込まれていく。
ハルトの視界が歪み波打つ。
「うへっ、気持ち悪ぅ……」
いつの間にか、目の前に祭壇がある部屋に転移していた。
祭壇には1本の槍が飾られていた。先端が銛の形をして刺突に特化した武骨な短槍。柄は木材では無く、生物の骨で出来ており、穂は革製の穂鞘に収まっているので、材質は分からない。
銛の形の穂であると言うのも、穂鞘の形状からの推測である。
持ち手の部分には紐が巻き付けてあり、石突きには謎の金属が使われていた。
「何だか神聖な雰囲気のする槍があるなぁ」
(この槍に呼ばれた様だにゃ)
「この槍に──」
ハルトが槍に手を触れると、槍が輝き声を発した。
『我が名はゲイ・ボルグ、神に作られし槍だ!』
「おぉ、ビックリしたぁ。ん? ゲイ・ボルグ?」
驚愕のハルトはゲイ・ボルグから手を離す。しかしゲイ・ボルグから発せられた神聖な淡い光が、ハルトとゲイ・ボルグを繋ぐ。
『汝と契約を結んだ!』
「はっ? 契約? 何勝手に結んでんの? キュウ、大丈夫なの? コレ」
(問題無いにゃ。所有者に認定されたって言う事にゃ)
『コレ? 無礼な事を言ってくれるのう、今代の契約者は。して、名は何と申す』
「ん~……、ハルトだ。」
『ん? 何故間を置いた?』
久方ぶりに他人と会って話をしたゲイ・ボルグは、会話に飢えてたのかも知れない。
(いちいち煩ぇ槍だなぁ)と不敬な事を思うハルトだった。
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