第13話『ノア、今度こそレストランへ向かい着く』
キーラは「私はアーラを連れて戻ってくるのにゃ!」と言い残し走り去って行った……
当然俺は彼女を待つということすらなかった。成り行きで了承こそしてはしまったが、出来ることで有れば彼女らを連れてなど行きたくはない。何故信頼出来るかも分からない者を側に置きたくなどないし、ましてはこれから暫く世話となるアルノルト商会に対しても迷惑であろう。
故に俺は勧められたレストランへと急いだ。今思えば違う店に向かえば良かったと後悔してしまうのであるが……
カフェでは彼女のみケーキを注文し、俺は紅茶で済ましておいた。ケーキ(半銀貨一枚)×1、紅茶(銅貨三枚)×2、お冷(銅貨一枚)×2で銀貨一枚と銅貨三枚の出費となった…キーラが会計前にも関わらず走り去ってしまったものであるから、割り勘をすることも叶わず全て自費である。勿論そんな程度の出費では俺の財布は痛くも痒くもないのだが。
キーラの相手に三十分程時間を取られてしまった。カフェでは俺は一杯の紅茶と水しか飲んでいない、その為自然とレストランへ早く着きたいという意識が強くなり、そして無意識のうちに風魔法を使用して一般以上のスピードを出して走っていた。
途中「砂埃が舞うだろ!」等々非難する声もあった気がするが俺は特に気にはしていない。そんなことよりも早く食事を取りたいのだ。
少し走ってみるとそのレストランの外壁を遂に見ることができた。俺はウキウキした気持ちを抑えることが出来ないままレストランへと立ち入った。
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レストランはとても落ち着いた様子を見せていて、光度はやや低く設定されているようだ。その為ガヤガヤ会話して食事をするレストランというよりは、静かにその空間を楽しみつつ料理も楽しむというタイプのレストランであろう。
確かにこういうお店は人気であって当然だと思う……ただ今はとても悲しく感じてしまった。待合所に置かれたソファーは全て埋まり、ウェイティングリストを除くと少なくとも十組は先客がいるようであった……
俺は大人しく『ユノ・アルノルト』と記入して壁に寄り添って待つこととした。俺が子供の欄に丸を付けたという事を言わなかったように、この世界には子供であるから値段が安いということや、配慮されるということが少なく、このレストランも決して例外ではなく子供と大人の欄が存在しなかった。
俺はこの子供に対する配慮が無いことに少しばかり違和感を持つし、いずれ改善をしていきたいとは思ってはいるのだが、如何せん幾ら『史上最高の王子』と評されようとも、未だ十歳になったばかりの子供ではそこまで力もなく、なかなか改善する為の行動を起こすことは出来ない。
よくよく考えて見れば今回のアルノルト商会への出向は自分の財力を増強し、子供らへの配慮等の改善や余り財政支援の乏しい救民院への支援活動を支える為のいい機会になるのでは無いであろうか…そう考えると少しだけ今回の出向に前向きになれた気がした。
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