第3話『その後と提案』
あの面倒くさいパーティーから数ヶ月が経った。あの後ブラック伯爵家からは様々な不正の証拠が見つかったらしく、当主、妻にその二人の子は一人を除いて漏れなく全員処刑となった。
元々ブラック家は王統派の者だったらしいが、前当主が死亡し、弟が当主となってからは貴族派にすり寄ったらしい。国王たる父は前当主が暗殺されたと疑ったものの、具体的な証拠は上がらず今まで続いてきたらしい。
この事を父は嬉々として話しており、『あの忌々しいブラック伯爵』とか言っていたから処刑出来て大変嬉しいのだろう。正直十歳の子供に話す内容では無いと思うのだが……
因みに命が助かった者はブラック伯爵家前当主の遺児であるアリシア・ブラックだ。
アリシアはブラック伯爵の養子となっていたもののとても酷い待遇であり、発見当時は地下の牢獄に入れられていた。そして身体中に痣を初めとした傷痕が残っていたらしい。
常に怯えた様子で、救助隊が敵では無い事を理解した瞬間、緊張が解かれたのか気を失ったらしい。
国王の怒りを買い、体制を整える為に当然の様にブラック伯爵家はお取り潰しとなった。父はブラック家に思い入れがあるのかは不明だが、分家筋のブラック男爵家が子爵となり、旧伯爵領の一部と領地取り替えとなった。アリシアはブラック子爵家の養子となった。
「なるほどアリシア殿は大変ご苦労をされた様ですね。何故怯えた様子だったのかふに落ちました」
「そうじゃな……そのだなユート。縁談が来ておる」
政略結婚は王族の義務というのは分からなくもないが、正直嫌というところが本音である。断れるのなら断る此れは貫かねばならない。
「その……お相手は誰でしょう?」
「アリシア殿だ。なんでもユートにべた惚れらしいぞ。モテる者は罪よのぉ」
父はニヤついた顔で此方を見てきた。なにか企んでいる顔だ。正直に言って今すぐにでも殴りたい。
「お断りさせてい「勿論受けておいた。『爵位が低い為側室となるが』と聞いたところ直ぐに首を縦に振って喜んでいた。良いことをしたわ」
機嫌が良さそうに笑っていた。当事者の俺の意見を聞く事なく婚約を決定するとは……殴っても問題はないだろうか?身体は十歳といえど魔法はトップクラスだ。父上など相手にもならんだろう。純粋な力勝負はだって? そんなの勝てるわけないじゃないか……グッと殴りたい思いを抑えた。俺って素晴らしい。
「父上しかしながら……未だきちんと知らぬ相手、俺の懐に入れたくはありません」
「な〜に結婚は十五歳からだが学院の卒業した後ゆえ十八歳頃になろう。其れまでに愛を深めればいいのじゃ。其れに政略結婚は王族の義務ぞ。(前ブラック伯爵との約束など口を裂けても言えまい……もっと人懐っこければ。しかし其れだと隠密には、悩ましい)」
「……」
返す言葉がなくなった。政略結婚と言われてしまえば断る事は出来ない……国の為、民の為、此処は受けるしかないだろが、父の様子を見る限り本当に政略結婚なのか疑問が残る……悩んではいけないのだろうか?
尚これによりブラック子爵家は貴族派から王統派へ鞍替えした。しっかりと政略結婚の側面もあった様。
話は終わり部屋から立ち去ろうと、ソファーから腰を上げると、父に止められた。
『未だ話は終わっておらん。お主には隠密としての仕事を与える。五大商会が一つアルノルト商会の隠し子という戸籍を用意した。其処で成功を収めよ。商会の情報網は至高であり、王国の情報網に引けをとらん。頼んだ』
『その様な話題当然念話を使いますよね……商会とか、ますます裏切られそうで怖いのですが……』
『大丈夫だ。奴は信用できる。余が保証する(色々と手を回して、手に入れた戸籍じゃ。使って貰わねば困るのじゃ)』
『ん〜まぁ……はい、でも王城から離れるのは……』
『此処を離れるのは一月後じゃ。影移動で何度か戻って貰う故、王族としての仕事もして貰う。大変だろうが頼んだ』
渋っていると要件をだけを伝えられた。どうやら俺には拒否権というものが存在しないらしい。
そんなこんなで俺は商会で働くことになりそうです。
駄女神様どうしたら良いのでしょう。
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