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「そこを行く若い二人」と声をかけられた。姉はスタスタと先に進んだがぼくは振り返ってしまった。
「そんなもんを配っちゃいかん」
「おじさんは誰」
ぼくの声は嗄れていてどちらがおじさんなのかわからないくらいだ。おじさんの声はまたなぜか甲高いのだ。小太りでありきたりのおじさん、おしゃれでもなく、髪型の決まっていない、底で見つかった洗濯物のくしゃくしゃのシャツのようにくたびれている感じ、両目のクマが驚くほど黒く、ぐるぐると目の周りを取り巻いている。
髪が風に靡いている。
ぼくはその男をいなかったことにした。
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