きものん日和
丘月文
着物が着たい
どうしたものか。きてしまった、マイ着物ブーム第三波。
もう、これで私の人生において三度目。…………今度こそ。今度こそは、痛い目をみたくない!!
と、思うものの。
さぁ、どうしてくれよう、なのです。この、目の前の着物。
着物。和装。思えば、小さなころから興味があったのかも。
父の趣味で大量にあった手塚治虫先生の漫画で好きだったのは『どろろ』と『ハトよ天まで』だったし。夏祭りに着せてもらっていた浴衣も好きだった。
でもよくよく思い返せば、七五三で着た着物は苦しくって早く脱ぎたかったし、二十歳の振り袖は派手派手しくって好きじゃなかった。
でもたぶん。好きだったんだろうなぁ、和装。
働きはじめて、化粧っけもなくお洒落もせず、とくにお金がかかる趣味があるわけでもなく(妄想を文字に書き起こすっていう安上がりな趣味だったから)、もう本当に働いて家に帰ってを繰り返す日々。
気の迷いからか、販売員のお姉さんに誘われるままに反物を身体に巻かれて。
で、何故だか、どうしてもその反物が欲しくなっちゃって。それでふわふわと購入しちゃったのが始まり。
訪問着とかの派手で綺麗な着物じゃなく、墨色の生地に柔らかな光がぽっぽっと散っているような、飛び小紋。雪輪の上に桜の花びらが描かれていた。
今でも大好きでこの着物を購入したことに悔いはない。んだけど…………まぁ、そのあとがお決まりの営業パターン。
催しものに誘われて、気づけば真珠の指輪まで買わされてたってわけ。それもローン組んで!!
……………ぐぉぁ、思い出しても恥ずかしいし、痛ぁい~~~~。もう、まんまと! 上手に乗せられちゃって!!
でもって、その後、その呉服屋さん(大手)は地域から撤退しちゃって。ありがちな、タンスの肥やし着物にまっしぐら、ですた。
母に散々、叱られて。
「でも欲しくなっちゃったんだもん…………。友達の結婚式に着るからいーもん」
と、言い訳したおしたけど、着たのは友人の結婚式一度きり。なんてもったいない!
で、呉服屋はこりごりと思っていたのに。またもや罠に引っ掛かる。
ある意味、幸運なんですが。嫁いだ先が、着物を着るお姑さんがいるお家だったのデス。
といっても、嫁いでわりとすぐに介護生活になっちゃったので、お着物の話はあまりせず。そうこうしているうちに他界されてしまいました。もっと聞いておけばよかったと後々に後悔。
息子さんしかおらず、嫁も私だけ。残された着物は自然と私が管理することに。
もう、正直に。わっけわっからーん!! ですよ!?
何が分からんって、着方どころか、どういう着物か、
着物を着る人に簡単な解説本をもらうも、やっぱり分からず。
で、行っちゃったんです、呉服屋。
う~ん、やはりと言いますか、売りたいんですよね、呉服屋さんは!!
当たり前ですけれども! でもクリーニング頼んだのに、いつの間にかお仕立て直しでウン万円になってたんですけども!?
いや、お姑さん、良い
しかも呉服屋さんから電話が頻繁にくるように……………ノルマが大変なんだろうなぁ。
友人の結婚式が近かったのと、子供の入学式、卒業式で着たくて、けっきょく
………………あぁぁ~~~、やってしまった。これはマズイと足が遠退いたわけです。
で、現在。
お姑さんが亡くなってそれなりに時間が流れまして。旦那さんの実家は片付いたのだけれど、実はまだ手付かずの裏の離れがあった。
断捨離ブームも手伝って、離れの整理もさせてもらいましょうと鍵をお義父さんに借りて、中を覗いてみたら。
発見しちゃったんですね。
しかも、見覚えがあったんですよ。ええ、私達の結婚式で着てくれていたものでした。
おそらく私達の結婚式後にクリーニングに出して、そのままにしておいたであろう、私達の式のメニュー表やら小物やら。
じん、と、してしまって。ひろげてみれば、まだまだ着れそう。
少し金が剥がれているところがあるけれど、メンテナンスすれば活躍できそうな着物。
…………………………どうしよう。
もう高い買い物はしたくない。でもでも、この着物を捨て置くには忍びない。
そしてタンスにある、着物達。
「着物、着れるようになりたいな」
何度目になるか、覚えてもいない呟き。
今度こそは取り組むべきだと拳を握りしめ。
そして私は誓ったわけです。
今ある着物達、全てを着てやるぞ! と!!
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