・惑星開拓&スポーツ&VR~P-1グランプリ! ~

 P-1パイオニアワン! それは人類のロマン!


 P-1パイオニアワン! それは人類が再び得た開拓地フロンティア、野望の花道である!


 VOOOO! BUOO、VUOOOO!!


 荒々しい赤茶けた岩石質の大地の大気を、多くのマシンの鼓動が震わせる。


 此処は惑星P-1パイオニアワン、人類が初めて得た植民惑星。


 無数の深い谷間と高い山、そして間欠泉めいた突発的な激流。しばしば吹き荒れる強烈極まりない砂嵐とそれが生む流砂、雷雲を更に凶悪にしたEMPを放つ電磁嵐、そして飛行性のものも陸生・水棲のものもいる、炭素と金属が融合した荒々しく強靭で巨大で狂暴な原生生物達。


 故にこの星を駆けるのはP1マシンと呼ばれるこの星を開拓する為に作られた専門の有人操縦人型機械だ。


 車両? 駄目だ。数キロメ-トル進む間に岩のクレバスめいた無数の裂け目があり、泳げそうなほど目の細かい流砂河があり、断崖絶壁か急勾配落石だらけの山があるんだぞ? しかも谷には無数のオベリスクめいた石柱が巨人が観光する鍾乳洞めいてにょきにょき生えてやがる。


 航空機? 一日に一度は砂嵐や電磁嵐が吹く。電磁嵐のEMPに対抗するシ-ルドは不可能ではないが思い。そんな重いEMPシ-ルドと現住生物バ-ドならぬベムストライクどころか積極的に噛みつきにくるそいつらへの防御を施した上で更に風のない間だけ飛ぶ、そんな限られた飛行可能時間と防御手段に食われて限られた積載量の為に、このクソ凹凸惑星の表面をのっぺりと整地・舗装して飛行場を作る? ナンセンスだ。垂直離着陸可能な回転翼機ヘリコプタ-は気象に対して軟弱ナイ-ヴ過ぎるし、ついでに言えば無人機ドロ-ンの類いもEMPを考えればヤバい。


 船舶? 海が無く、川が間欠泉みたいに時-現れては消える上に流れる川底はこの荒々しい星に相応しい障害物だらけで、流れている間は洪水以外の何者でもない激流の勢いと大河の水量と氷海めいた無数の漂流物を持つ環境で?


 この荒々しい星を開拓するには、跳び移る事もよじ登る事も這い回る事も伏せ隠れる事も殴り合う事も泳ぐ事も機体の中から出ずに採掘や採取を行う事も出来るマシンこそが求められる。


 更に勿論人類は争い合う存在でもある。例え他星を開拓しようと相も変わらず。電磁嵐に耐えるだけでなく他所の勢力に勝手に乗っ取られないようにするには、ハッキング技術も発達している以上最終的に人間も操作に噛ませるのが一番堅牢という事になる。コンピュータはハッキングできても人間の脳はハッキングできない、座禅ずる達磨大師じみた地球最後のブラックボックスだからだ。


 そして争いは必定とはいえ、果ても際限も交戦規定も無く争っては新天地を台無しにする事もまた必然。まして文明の肥大の結果、金勘定と欲望と娯楽と快楽の充足とが、諸々を圧倒するようになればこそ尚更だ。


 故にこそ、今此処に無数のP1マシンが揃い作動音を響かせている。資源豊富なこの星の開拓権を奪い合う為に。


 であるが故の手段として、娯楽を兼ね、かつ平和的な争いとして効率的に惑星開拓を実現し優秀適切な開拓者を選別するに、P-1パイオニアワンをより効率的に開拓する能力を有する事を証明する為に競い合う……


 即ち、P-1マシンによる、現住生物や相互との闘争を含むあらゆる障害を乗り越えて踏破する能力を競うレースによる勝負が行なわれるのである!


 操縦担当のメインパイロットと、電子戦・整備・作戦判断担当のサブパイロット、そしてその他諸々を行いサブパイロットに電子的に防御される機体AIという三重知性構造とこの時代の人類技術の限界から人間の五倍程10メ-トル前後のサイズをに共通とするが、それ以外は物理的・電子的な頑丈さと機動性と戦闘力と整備性をそれぞれの理想のバランスで両立せんと千差万別の姿をしたP1マシン達が居並ぶ。


 彼等は皆人類文明の様-な企業等のこの惑星の開拓権を争う団体の代表達。ひしめき合って、それら団体の利益調整会議であるP1開拓連合委員会のレースか石の合図を待つ。それは物理的にだけではなく電子的にも。


 即ちこの空間に重なるように存在するP1開拓連合委員会の施設と開拓済の拠点や機体同士のネットワ-クが構築する電脳空間において、機体の各部居を司るプログラムの集合体であるが故に電脳空間上でも電子戦を行うサブパイロットの認識を補助する為に意識に投影されるイメージ立体映像のなかで個々のP1マシン実体とそっくり同じ姿に構築された各機体のプログラムもまた並び、それぞれの機体のAIを宿す防御プログラムを攻略せんとレース開始と同時に争い合う事になる。


 沿岸アメリカ・リベラリズム都市国家同盟帰属企業共同体の、四足歩行モードと二足歩行モードを切り替え可能な洗練され生物的なデザインのダイナミックドッグは新鋭と称えられる。


 GAGUゼネラルアメリカコーポユニオンが誇るP1マシンの上に更にパワ-ドス-ツめいた動力付強化装甲を装着したPPFFパワードP1フロンティアファイターもまた負けては居ない如何にも攻防走揃った強そうな赤と金の装甲が艶光る高級機。


 特殊な機体制御システムを採用し電子戦防御力において最強にして機体高速制御に高い能力を揺すると噂される中華人民公司の無名無命ウーミンウーミンは当然の優勝候補。漆黒にして無貌の均整の取れた彫像というべき姿は静かな威圧感。


 NECO新欧州文明企業連合猫騎兵カッツェカヴァリエは精密な構造とプログラミングで燃費と柔軟性に優れるこれも有力候補。


 そして帝政新々興財閥オプリチニキ・オルガリヒのPTK67も、簡素堅実な基本構造故に頑健堅固重装甲の徹底的タフネスを誇る名機体。


 他にも駱駝人間めいた長い手足と首に加え360度回転する腰を特徴とする王家財団のジャンジャヴィ-ド・ザンブーラキ、最も小型で耐気候性に能力を割り振った丸っこい機体が特徴なガンガーグル-プのヴァーハナ3、そしてライムグリーンに銀・濃紺をあしらった塗装の流麗な機体、東亜太平洋諸島企業連合の未来隼ミクハヤブサ、他幾つもの機体が並ぶ中。


 フライングを見過ごさない信号アイカメラとフラッグアームを持つ監視ユニットが立ち上がり、目を光らせ腕を掲げ……さあ、レースが始まる!

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