変わる世界

「さあ、これから面白い事になるよ~♪」


 ロキさんの一言から始まった話は、この世界に大きな変革を齎す事になる。

 まず、オーディンの処遇についてだけど、ロキさんによって主神の座を奪われてしまった天界の元主神オーディンは、オーランド王国に降り立った時から戦争終結に至るまでの間に亡くなってしまった兵士や近隣諸国の住民達の数の子供を立派に育て上げる保育園の園長として、天界と聖域迷宮から呼び寄せたオーディンの妻達の尻に敷かれながらサンミニアート・アルモンテ聖国で過ごす事になる。


 そして、オーランド王国の女王フィンについても、何故か、サンミニアート・アルモンテ聖国に預けられる事になった。

 オーディンや他の神々の協力を得て数々の戦争を引き起こし、近隣諸国を占領してオーランド王国へと併合した事もあり、てっきり敗戦後は死刑になるかと思ったが、そうはならなかったらしい。

 シェトランドの采配でサンミニアート・アルモンテ聖国に預けられる事になったが、それって死刑より厳しい采配なのではないかと個人的に思っている。


 また、オーランド王国については、シェトランドとの当初の取決め通り、ユートピア商会が治める事になった。オーランド王国はマリエハムン迷宮の支配下にある為、比較的簡単に復興できたが、オーディン達により破壊された国に関してはそうもいかない。

 これからその国にある迷宮を攻略し、迷宮の支配領域を広げる事で復興の足掛かりにする予定だ。


 ちなみに、オーランド王国の近隣諸国を破壊しまくった神様達は、みんな揃ってロキさんに有効活用されているらしい。ロキさんのいう有効活用が何を指すのかわからないが、多分、碌な事ではないだろう。

 まあ、百年経てば解放されるらしいし、それまでの期間を贖罪の期間だと思って頑張ってほしい。


 ああそれと……。


「悠斗兄! 旧マデイラ王国を支配しているキングゴブリンを倒しに行ってくるね」

「うん。三人で大丈夫?」

「全然大丈夫だよ」

「問題ない……」


「そっか、それじゃあ頑張って、無理はしないようにね」

「うん。行ってきます!」


 オーランド王国との戦争が終わってから数週間、ケイ、フェイ、レインの三人もフェロー王国の商業ギルドに登録し『収穫人』として活動を始めた。

『収穫人』の登録には年齢制限を設けておらず、実力次第で登録する事ができる。

 勿論、魔法学園に通いながら休息日にのみ『収穫人』として活動を行っている。

 ユニークスキルの扱いも目覚ましいものがあり、既にSランク冒険者並の力を持っているのではないだろうか。


 ちなみに最近の俺の悩みは、ケイ、フェイ、レインの三人に身長を抜かれてしまった事だ。

 この世界ウェークに住む住民達の平均身長はかなり高い。

 神化した際、何故か身長が少し縮んでしまった事により、完全に追い越されてしまった。

 ケイ、フェイ、レインの前では神としての権能を使い姿を変えることで身長を誤魔化しているが、いずれ今の身長をも追い越していくことだろう。


 そして、最後に俺のこと……。

 オーディンの最後のあがきにより神化した事で、ユニークスキル『影魔法』の能力が著しく向上した。

 なんと、行った事がない場所にでも座標の指定さえできれば行く事ができるようになったのだ。


 勿論それは、この世界ウェークだけに留まらない。


「『影転移』」


 そう呟くと、地球の俺の元いた家に時間軸と座標を合せ影に潜っていく。

 影から出ると、そこには見慣れた光景が広がっていた。


 異世界ウェークにはなかったテレビに、漫画、テーブルに置かれたお菓子。

 冷蔵庫を開けると、某有名メーカー製の黒く甘い炭酸水が数本入っている。


「帰ってきた。帰って来れるようになったんだ……」


 あまりの懐かしさに自然に涙が出てくる。


「あっ、そういえば!」


 以前、愛堕夢と多威餓に手紙を託した事を思い出した。

 窓から外を見てみると、愛堕夢がポストに手紙を投函している姿が目に映る。

 愛堕夢がポストから離れたことを確認すると、家の扉を開けポストに投函された手紙を手に取った。


「危なかった……感情に浸りながら向こうで書いた手紙、父さんや母さんに読まれる前に確保できて本当によかった」


 俺は『収納指輪』に手紙をしまうと、家の中に入っていく。

 そして、大量のお菓子と飲み物をテーブルに並べると、笑顔を浮かべながら呟いた。


「久しぶりの我が家だからね。さあ、溜まっていたドラマやアニメを見まくるぞ!」



 カツアゲをされたかと思えば、愛堕夢と多威餓と共に異世界ウェークに呼び出され、王城でハードな訓練を受けさせられたり、迷宮では囮にされたりと……思い返せば色々な事があった。


 でも、そのお蔭で皆と出会い、様々な経験をする事ができた。

 カツアゲから巻き込まれた異世界転移。

 今はあの時、異世界転移して良かったと心の底から思っている。

 これまで出会った皆に、紡いだ縁に感謝の一言を伝えたい。


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 ご愛読ありがとうございました!

 連載開始から一年半、これにて『転異世界のアウトサイダー』完結となります。


 初投稿にして、ここまで長い小説を完結させられたのは初めてです。

 これも連載当初より支えてくださった読者の皆様のおかげです!

 改めて、ありがとうございました!


 『転異世界のアウトサイダー』はこの話で完結となりますが、この後、後日談や、まだまだ書ききれないエピソードを書いていきたいと思います。

 もしこの登場人物の閑話・番外編をかいてほしいといったことがありましたら、ぜひ、コメント頂けると嬉しいですw


『マデイラ王の凋落生活』については明日公開予定ですw


 投稿は不定期になるかもしれませんが、その際はご一読お願いします!


 また新作「ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー」の連載を開始いたしました!

 こちらも是非ご一読ください!


 読者の皆様、応援ありがとうございました。

 誤字脱字の指摘やコメントを頂けて本当にありがたかったです!

 

 皆様に最大級の感謝を! 今後とも、番外編や書籍版、新作など、お付き合い頂ければ幸いです。

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