迷宮再構築

 朝食を食べ終えた俺達は、一息つくと窓の外を眺める。

 そういえば、ショッピングモールの方はどうなったのだろうか?

 ヴォーアル迷宮の攻略をする前、ショッピングモールで働く人材の確保と教育を施しておくみたいな事を言っていた気がする。たった数日でそんな事可能なのかは分からないけど……。


「そういえば、ショッピングモールの方はどうなったかな? 働いてくれる人の確保や教育は上手くいってる?」

「はい。人材については、オーランド王国の難民の中から三百名ほど、また王都に住む者からも二百名ほど従業員として採用致しました。当然、私のスキル〔自動防御〕に弾かれるような者は採用しておりません。従業員の教育につきましては、現在、研修を行っている最中でございます。あと五日もすれば使い物になるかと……」


 流石は屋敷神だ。

 俺がヴォーアル迷宮を攻略し、寝込んでいる間にもうそんな事まで……。


「そっか、ありがとう」

「いえ、当然の事です。従業員の採用と教育については、こちらにお任せ下さい。悠斗様は、ヴォーアル迷宮の新しいボスモンスターの設置と再構築に力を注がれてはいかがでしょうか?」

「うん。それじゃあ、そうさせて貰おうかな」


 折角、ヴォーアル迷宮の支配権を獲得したんだ。

 どうせなら、ヴォーアル迷宮を目当てに商人達が挙って集まるような蠱惑的な迷宮にしたい。


「それじゃあ、体調も良くなってきたし、ヴォーアル迷宮の再構築をしに行ってくるね」

「はい。気を付けていってらっしゃいませ」

「うん。それじゃあ行ってくるね。あっ!? そうだった! 屋敷神、フギンとムニンの階層を用意してあげてくれないかな? ここに連れて来る際にそう約束しちゃったんだ」

「新しい階層ですか……分かりました。すぐにフギン様、ムニン様用の新しい階層を用意致しましょう」


 すると、フギンとムニンは「カアー」と鳴きながら屋敷神の肩に留まり擦り寄った。


 現金な鳥達である。

 さっきまで、あんなに懐いていたというのに、まさか階層一つで手の平を返すとは……。

 まあいいか。


「フギンとムニンの希望も聞いてあげる様にしてね。意思疎通が難しいかもしれないけど、そこはこう、なんとかしてあげてくれると嬉しいかな」

「はい。ある程度の意思疎通はできる様ですので、フギン様とムニン様の要望にはできる限り応えたいと思います」


 屋敷神がそう言うなら問題ないだろう。


「じゃあ、フギンとムニンをよろしくね」

「はい。後の事はお任せ下さい。改めまして、気を付けて行ってらっしゃいませ」

「うん。行ってくるよ!」


 俺はそう言うと、影転移で迷宮核が安置されているヴォーアル迷宮第81階層に転移した。


 ヴォーアル迷宮第81階層に転移すると、迷宮核が妖しい光を放っていた。

 早速、迷宮核に触れると、頭の中に迷宮内の情報が流れ込んでくる。


「今現在、ヴォーアル迷宮攻略中のパーティーは三十五組、結構多いな……そして、彼等のいる階層は18階層か……」


 取り敢えず、第1階層から第20階層の再構築を諦めた俺は第21階層以降の再構築から始める事にした。


 第1階層から第20階層迄はエストゥロイ領にあるケァルソイ迷宮やアゾレス王国のアンドラ迷宮を参考に畜産に適した階層にするとして、第21階層以降は商人や冒険者が挙って来たくなる様な迷宮にしたい。


 冒険者はともかく、商人が欲しがる物、商人が欲しがる物……商人が欲しがる物って一体何だ?

 希少な物が採れる様にすればいいだろうか?

 しかし、希少な物が採れすぎて、値崩れされても困る。

 とはいえ第20階層迄来る事のできる冒険者は限られている筈……だったら問題ないかな?


「まあ、取り敢えずやるだけやってみよう……」


 俺は迷宮核に魔力を流すと、現在、森林フィールドになっている階層全てを鉱山フィールドに変えていく。とはいえ、これだけでは、森林が山に変わっただけ、このフィールドで希少金属が採れる事が分からなければ意味がない。折角なので、冒険者にも美味しく商人にも美味しいモンスターを配置しておこう。


 という事で、第21階層から第29階層迄のモンスターを全てゴーレムに変え、レアモンスターとして倒す事で銀を採取できるシルバーゴーレムと、金を採取できるゴールドゴーレムを配置、ついでにミスリルゴーレムも配置していく。


「これで良しと……あとは第31階層以降だけど……」


 ヴォーアル迷宮第31階層から39階層迄は、荒野フィールドだった筈……ここはいっそ、森林フィールドにしてしまおう。森林も重要な資源の一つだ。まあさっき森林フィールドを鉱山フィールドに変えたばかりだけど、やっぱり森林は必要な気がする。

 しかし、ただ森林が広がっているだけのフィールドというのもなんだか味気ない。


 よし、いっその事、森林フィールドの足場全てをポーションの原料となる癒草で一杯にしてしまおう。

 まあ第31階層迄来てポーションの原材料である癒草を採取していく冒険者がいるとは思えないけど、何もないよりかはマシな筈だ。


 ここまですればもう十分だろう。

 どの道、ヴォーアル迷宮第40階層に進める冒険者は限られている。


 第20階層迄の階層については、後々、再配置するとして、問題は第70階層のボスモンスターと第80階層のボスモンスターか……。

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