子供達の成長②
「悠斗兄、久しぶりだね! いつ帰ってきたの?」
「うん? ついさっきだよ?」
「ユートピア商会の土地が接収されたのに?」
「うん。接収された土地はもう戻ってきたからね。もう、ユートピア商会の営業も始めているよ」
悠斗兄は簡単にそう言うけど、普通に考えてあり得ない。
国に接収された土地が戻って来るなんて事ありえるのだろうか?
それに接収されてしまった土地は更地になっていた筈だ。
さっき帰ってきてユートピア商会の営業を始めている時点で、どこかおかしい。
「それよりもレイン。俺がその勝負しようか?」
「悠斗兄が私と……」
「うん。そうだけど、ダメかな?」
レインの奴、何だか嬉しそうな顔をしている。
くそ~! ズルい。俺だって悠斗兄と勝負したいのに!
「いいに決まってる……」
「そう! レインと魔法勝負をするのは久しぶりだね。自衛用にスキルブックを渡したけど、どんな風に魔法を使うのか楽しみだ」
そういうと、悠斗兄が身体に影を纏っていく。
あれは悠斗兄の〔影纏〕……うわぁ~。最初から全ての魔法と物理効果を無効化する影纏を使うなんて大人気ない……。
俺のユニークスキル、光魔法ならともかく、氷魔法を使うレインにそれを使うなんて……。
「問題ない……今日はとてもいい日。悠斗兄に勝つ記念日になりそう……」
「おお、凄い自身だね。これでも俺、Sランク冒険者なんだよ? でもレインのその感じ嫌いじゃないかな」
すると、レイン自身も身体に氷を纏わり付かせていく。
毎回思うけど、あれ寒くないのかな?
「それじゃあ、行くよ~! 〔影精霊〕」
悠斗兄がそう言うと、レインを囲む様に至る所から影精霊が姿を現す。
影精霊は実態を伴った影、レインに対処する事ができるのだろうか。
すると、レインは頭上に大きな氷の透鏡を出現させる。
「影魔法の弱点は分かっている。〔
氷透鏡、簡単にいえば氷でできた凸レンズだ。
氷をレンズ上にする事で集光力を高め、光で影精霊を焼いていく。
雨でも曇っていても使えないレインの大技だ。
まさかこんな手で悠斗兄の影精霊を攻略するとは思わなかった。
「おお! 凄いよレイン! こんな事ができる様になったんだ! これは俺もうかうかしていられないな〔影分身〕」
影精霊が倒される事に焦りを覚えたのか、今度は悠斗兄が影分身の魔法を使い十人の悠斗兄を作り出す。
影分身も影で出来ている為、基本的に影精霊と弱点は同じだ。
しかし、一つだけ決定的に違う点がある。
「「「いくよレイン! 〔影刃〕!」」」
「うっ……!」
そう。それは影分身が悠斗兄と同じ様に、影魔法を使う点だ。
悠斗兄が放った影刃が、レインの氷透鏡を砕いていく。
「それなら……〔氷精霊〕」
そう呟くとレインは氷精霊を呼び出した。
悠斗兄の影精霊に物理攻撃が効く事は分かっている。
「行きなさい……〔氷精霊〕」
レインが氷精霊を影精霊に嗾けると、悠斗兄がニヤリと笑った。
「そうはさせないよレイン。〔影纏〕」
悠斗兄がそう呟くと、影精霊に影纏を纏わせていく。
ズ、ズルい……悠斗兄にそれをされては勝ち目がない。
氷精霊が影纏を纏った影精霊に蹂躙されていく。
「レイン。これで終わりかな?」
悠斗兄が笑顔でそう呟くと、レインがふと笑みを浮かべる。
「そんな訳がない……〔凍結世界〕」
レインがそう呟くと、レインを中心に辺りが凍り始める。
しかし、俺とケイに凍結被害はない。
どうやら、相手を選んで発動させている様だ。
凍結世界の魔法は、レインの編み出したオリジナル。
その名の通り、魔力の続く限り、レインの指定する世界を凍結する氷魔法だ。
これには、流石に分が悪かったのか悠斗兄の影分身が歩を止め凍り始める。
「流石の悠斗兄でも、これは無理だよね?」
「レインの凍結世界は全てを凍結させる魔法。悠斗兄でも危ないかも……」
すると、氷に覆われた筈の悠斗兄がニヤリと笑った。
ピシリと音を立てて、氷が割れ始める。
「レイン。今のスキルとっても凄かったよ。凍結世界か、息ができなくて死ぬかと思った」
ああ、それはそうだよね。
俺もレインの凍結世界を喰らった事があったけど、身体の周りを凍らされてしまえば息ができない。
何度、あの技の実験台になって死ぬ思いをした事か……。
しかし、初見にも係わらず悠斗兄の影纏に凍結世界の魔法は通じなかった様だ。
周りを見て貰えば分かる様に、レインを中心としてこの辺り一帯が氷の世界となっている。
しかし、悠斗兄はそれを受けてもピンピンとしていた。
「信じられない……やっぱり悠斗兄は凄い」
レインの呟きに俺も思わず同意してしまった。
やっぱり悠斗兄は凄い。俺達の想像を遥かに超えてくる。
「まだやる? レイン」
悠斗兄の言葉にレインは首を振る。
「大丈夫。今の私では、悠斗兄には勝てそうにない……でも次は絶対に勝つ」
「うんうん。俺もレインの成長を楽しみにしているよ!」
ああ、羨ましい。
悠斗兄と話す機会なんて、最近では滅多にない。
土日になれば会えるとはいえ、最近は国と揉めた事もあり中々、話す事ができなかった。
正直、悠斗兄には、もっと構って貰いたくて仕方がない。
「それじゃあ、今度はケイとフェイ! 俺と勝負をしようか」
「「えっ⁉ 本当にっ!」」
俺とケイが声を合わせてそう言うと、悠斗兄は笑顔を浮かべた。
「勿論さ。ケイとフェイの成長を俺に見せて!」
「「うんっ!」」
俺とケイは悠斗兄にそう応えると笑顔を浮かべた。
やっぱり、悠斗兄は凄い人だ。俺達はこの人に拾われてとても幸運に思っている。
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