廃坑内探索④
その後も廃坑内を奥へ奥へと進んで行くと次々と悪魔が現れる。廃坑内でこんなにも悪魔が大量発生しているだなんて一体何が起こっているのだろうか?
ちなみに地竜については、初めに見て以降全く現れる気配がない。
あの地竜が何故、廃坑内に居たのかは目下の所不明である。
まあ、そんな話はどうでも良い。
問題は……。
「ヨルズルさん次はどっちの道を行けばいいんですか?」
「う、うん! つ、次は……。多分、左の道かな……? なんちゃって……」
マモン複製体という悪魔を倒してからというものの、ヨルズルさんはずっと何かに怯えては震えている。
何なら途中で引き返そうと言ってきた時にはどうしようかと思ったものだ。
道は崩落してもうないというのに……。
仕方がなく〔影探知〕で坑道の様子を探る。
どうやら左の道は行き止まりの様だ。悪魔と戦うまではあんなにも頼もしかったというのに……。
頼もしいギルドマスター、ヨルズルさんはどこに行ってしまったんだろうか。
できる事なら早めに戻って来てほしい。
「左の坑道は行き止まりみたいです。右の坑道に行きましょう」
そう俺が口にすると、ヨルズルさん達がまた3人で話し出す。
◆
『ヨルズル様。何故、彼はああも簡単に悪魔を倒す事ができるのでしょうか?』
レイがそう尋ねると、ヨルズルは苦笑いを浮かべる。
『言ったでしょう。Sランク冒険者は規格外の存在だと……。私が知る訳ないでしょう』
『しかし、よろしいのですか? 何度も何度も罠に嵌めようとしている様ですが、元Sランク冒険者のドレーク様が求めているのは彼のと戦いでは……?』
『全くよくはありません。むしろ彼の……。ドレーク君の召喚したであろう悪魔を悠斗君が倒しまくっている方が問題です』
あの悪魔の名前はマモン。
悠斗君は知らない様だが、あれはドレークのユニークスキル、悪魔召喚で召喚する事の出来る悪魔の内の一体だ。
悪魔召喚のスキルには悪魔を召喚するだけではなく、悪魔を倒した者の姿を自動的に召喚主に知らせる効果がある。
悠斗君と共に廃坑にいるこの状況、一歩間違えば、ドレーク君の怒りを買う事になりかねない。
な、なんでこんな事に……。
すると、悠斗君が足を止め話しかけてきた。
◆
うん? この反応は……。
〔影探知〕で坑道内の様子を探ると、こちらに向かってくる人型の何かを探知する。
これは先ほどの悪魔とは違う様だ。
もしかしたら……。俺は足を止めるとヨルズルさんに話しかける。
「ヨルズルさん。人の気配を探知しました。もしかしたら、Sランク冒険者かもしれません」
するとヨルズルさんは強張った表情を浮かべる。
「そ、そうですか……。わかりました。ここからは私が先導します」
本当は先導したくないけど仕方がない。
何だかそんな表情を浮かべながら俺の前に立ち先導してくれる。
暫く坑道内を進んでいくと、コツコツと足音が聞こえてくる。
「廃坑調査から帰ってこないSランク冒険者でしょうか?」
「おそらくは……。Sランク冒険者のドレーク君でしょう」
Sランク冒険者ドレーク……。聞いた事がない名前だ。
念の為、戦闘態勢を取りながら待っていると、こちらに近付い来る人物の姿が明らかになってきた。
その男はフード付きの黒い外套を纏い、片目と口に派手なメイクをしている。そんな風貌の男だった。
「やあ、ヨルズル。久方振りだね。元気にしていたかい?」
「ああ、ドレーク君……。悠斗君、紹介しよう。彼がドレーク君だ」
見るからに怪しい風貌の男。
どうやら彼が廃坑調査から戻ってこなかったSランク冒険者ドレークさんの様だ。
「そう。私の名はドレーク。君とは初めましてだね。悠斗君……。話はヨルズルから聞いているよ。随分と御活躍の様じゃないか。私の召喚した悪魔を散々屠ってくれた様で、後進がちゃんと育ってくれている様で、元Sランク冒険者として誇り高いよ」
あれ? 今、元Sランク冒険者とか言わなかった?
俺がヨルズルさんに視線を向けると、ヨルズルさんはドレークさんから一切視線を外さず、ドレークさんには聞こえない様な小声で呟く。
『Sランク冒険者の言い間違いでしょう。ドレーク君は昔から国語能力が弱いのです』
なる程、国語能力が弱いのか……。
それにしてもこの人、私の召喚した悪魔を散々屠ってくれた様で……とも言っていなかったか?
もしかして、俺達を襲ってきた悪魔ってドレークさんが召喚した悪魔だったんじゃ……。
だとしたらもの凄く悪い事をしてしまった気がする。
収納指輪に入っている悪魔の素材をドレークさんに渡した方がいいだろうか……。
でも先に攻撃を仕掛けてきたのは悪魔の方だったし……。まあいいか、なんか言われたら返す事にしよう。
後進がちゃんと育ってくれている様で誇り高いとも言っていたし、怪しさ全開ではあるが悪い人ではなさそうだ。
「……まあいい。ここは狭いからね。ヨルズル、私に着いて来なさい。君達もですよ」
ドレークさんに言われるがまま着いていくと、広い空間に出た。
そして、ドレークさんは足を止めるとゆっくりこちらに視線を向けてくる。
「ヨルズル。君達は邪魔だから向こうに行くがいい。さて、悠斗君。ここなら思う存分戦う事ができる。そうは思わないかい?」
えっ? 何を言っているんだろうこの人は……?
急展開過ぎて話に付いていけない。
「た、戦うとはどういう事ですか?」
すると、ドレークさんは首を横に傾ける。
「ヨルズルから何も聞いていないのか?」
俺がヨルズルさんに視線を向けると、ヨルズルさんはビクリと身体を震わせた。
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