廃坑内探索①
ヨルズルさんが先導する形で廃坑の中に入っていくと、廃坑の奥底でモンスターの鳴き声と激しい物音がしてきた。
「誰かがモンスターと戦っている様ですね……。もしかしたら、廃坑調査に来ていたSランク冒険者かも知れません。加勢に向かいましょう」
ヨルズルさんはそう呟くと、まるでこの廃坑に入った事があるかの様な足取りで躊躇いなく廃坑を進んでいく。流石はエストゥロイ領冒険者ギルドのギルドマスターだ。度胸が違う。
物理・魔法攻撃を無効化する〔影纏〕を纏っていても、こんなにも不気味な廃坑をズンズンと進む気にはなれない。
俺一人であれば影精霊に廃坑内を探索させるか、カマエルを召喚してカマエルの影に隠れながら探索を進める所だ。
ヨルズルさんが先導する今も廃坑内を蓄光石の光が怪しく光る。
何というか……。まるでお化け屋敷の様だ。
ヨルズルさん先導の元、廃坑を進んでいくと広い空洞に出た。空洞の奥で竜と人型のモンスター同士が戦っている。
どう考えてもモンスターにしか見えないが、人型の何かがヨルズルさんの言うSランク冒険者なのだろうか?
「まずいですね。なぜこんな所に地竜が……。仕方がありません。ここは計画変更といきましょう」
ヨルズルさんは俺の背後にいるレイさんとマークさんに視線で合図を送ると、次いで俺に話しかけてきた。
「悠斗君。私達に地竜を倒す程の力はありません。退路を確保するまでの間、ここで地竜の様子を探って頂けませんか?」
「地竜ってそんなに強いんですか?」
「ええ、地竜はSランクのモンスターです。普通の人では決して敵いません。まあSランク冒険者であれば何とかなるかもしれませんが……」
チラッと地竜を見た所確かに強そうだ。地竜も人型のナニカで遊んでいる様に見える。
普通のやり方では確かに倒す事は難しいかもしれない。
俺が地竜に注意を向けていると、ヨルズルさんはレイさんとマークさんを連れて元来た道を戻っていく。
「悠斗君! 早くこっちへ!」
退路を確保したのだろうか。
そうヨルズルさんが叫び声を上げると、人型のナニカで遊んでいる地竜がこちらに視線を向けてきた。
「えっ! 地竜がこっちに視線を向けているんですけど! ヤバくないですかっ!」
「いいから早くっ! 何やら廃坑内の様子がおかしい!」
すると突如として『ドカン!』という音が廃坑内に響き渡る。
ヨルズルさん達と俺を隔てる様に廃坑が崩れてきた。
「ゆ、悠斗君!」
ヨルズルさん達は必死に手を差し伸べてくれているが、この位置からでは間に合いそうにない。
それどころか、ヨルズルさん達の身に崩落の危険が迫っている。
「ヨルズルさん、レイさん、マークさーん!」
俺とヨルズルさん達を隔てる様に土砂が埋まりそうな中、俺は咄嗟に〔影収納〕を発動させるとヨルズルさん達をこちら側へと引き込む事に成功した。
危なかった。一歩間違えば崩落に巻き込まれていた所だ。
ヨルズルさん達は廃坑の崩落から助かった事で呆然としている。
まあ退路は絶たれてしまったが仕方がない。
〔影転移〕を使えば、直ぐに出も外に出る事ができる。慌てる事はない。
俺が呆然としている様子のヨルズルさん達に話しかけると、崩落の危機に迫られて混乱しているのだろうか、ヨルズルさんが俺に掴み掛かってきた。
「お、おっ……。お前ーっ! 何してくれてるの!?」
「ちょっ! 落ち着いて下さい! みんな崩落の危機から助かったんだから良かったじゃないですか! ま、まずは無事、崩落の危機から助かった事を喜びましょうよ!」
いきなり崩落の危機に晒されて相当混乱している様だ。
目を血走らせながらヨルズルさんが俺に掴みかかってくる。
「そ、そんな事言っている場合じゃね~だろ! 地竜が迫ってるんだよ! 普通どうにかなる様な相手じゃないんだよ! 俺達はもう終わりだよ~!」
「だ、大丈夫ですって! さっきヨルズルさんはSランク冒険者なら倒せるかもって言っていたじゃないですか! 多分大丈夫ですって!」
俺がそう言うとヨルズルさんは更に発狂する。
「そう言う事を言っているんじゃねーよ! 私はSランク冒険者なら何とかなるかもって言ったんだよ! 一切断定なんてしてねーだろーが! 見てみろ! 地竜、あのモンスターで遊んでいるじゃねーか!」
普段のヨルズルさんとは思えない物言いだ。
敬語が剥がれて、少し野蛮な物言いになっている。
「だ、大丈夫ですって! ほらここに居るじゃありませんかSランク冒険者が! それにもしかしたら、さっきの爆発音を聞いて廃坑内に居るSランク冒険者が来てくれるかもしれませんよ!」
「そう言う事を言っている場合じゃねーんだよ! いいですか! 確かにSランク冒険者に常識的な人はいません! 非常識な力を持った人間、それがSランク冒険者だと認識はしています! しかし、相手は地竜です! あなたを含めSランク冒険者にまともな人がいる訳ないとは思っていますが、勝てる訳ないじゃないですかー!」
な、なんという事だ……。他のSランク冒険者達は知らないけど、俺までそんな風に思われているとは思いもしなかった。
「それだけではありません! 地竜が廃坑に住んでいるなんて私は聞いていませんよ! もし地竜がここを住まいにしているなんて聞いていたら、こんな所に来る訳ないじゃありませんか!」
確かに、言われてみればそうだ。
誰が好き好んで危険な場所に行こうと思うのか……。
とはいえ済んでしまった話はどうしようもない。
「ま、まあ落ち着いて下さい。大丈夫ですって! 地竜の目はこちらに向いているものの、人型のモンスターで遊んでいるみたいです。多分、まだ余裕はあります。いざという時に備え戦闘準備だけして、障害物に隠れながら他に退路がないか探しましょう」
俺がそう呟くと、ヨルズル達は渋々ながらそれに従った。
------------------------------------------------
毎朝7時の皆勤賞がァァァァ! 更新日時の設定が次の日の7時になっていましたorz
申し訳ございません!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます