大司教ソテル襲来④
「で、
大司教ソテルは命辛々に
「はぁはぁはぁはぁっ! 神様とは、強大で恐ろしいものですね……。ロプト神様のお力をお借りしなければ危ない所でした……。しかし、困りましたね。ルチアを神の御許へと送り届けない限り、ロプト神様からの神託を賜わる事ができません。」
ソテルは大量の汗を流し四つん這いの姿勢のまま、考えを巡らせる。
「困りました。困りました。困りました。困りました。」
ふと、気配を感じ視線を上に向けるとそこには先ほどまで対峙していた
「本当に困った方ですね。こんな所まで逃げているなんて……。」
ソテルが
ルチアに向かって
「あ、あなたは……。」
「さあお立ち上がり下さい。私は倒れている方に攻撃を仕掛ける程、野蛮ではございません。先ほどの続きを致しましょう。」
「…………。」
「おや、どうされました。さあ、立ち上がって、もしやようやく身の程を知ったのですか? 家畜でも鳴き声くらい上げる事ができますよ? あなたは人間なのですから言葉位喋れるでしょう?」
ソテルは膝をつき手で顔を覆うと、大声を上げて笑い出す。
「ふふっ、ふふふふふっ。確かに……確かに神様の力がこうも強大だとは思いませんでした。あなた、とってもお強いですね……しかし、ロプト神様の門徒として、他の神様に魂を捧げる事はできません。」
「ではお立ち上がり下さい。」
「ええ、そうさせて頂きます……ね!」
ソテルは立ち上がって直ぐ、十数本の杭を空中から取り出すと、
「ほう。まだそんな事ができましたか……。」
そして、
「ふふふっ、
ソテルはその場から後ろに跳躍すると、足元が鋭利な刃へと変化していく。
「ああ、ああっ。危ない所でした……。またザクザクされてしまう所でしたね。」
「流石はロキ様の御力です。因果律に干渉するその力……とても厄介ですね。」
「ああ、ああ。折角の
ソテルの
「仕方がありません。これほどとは思ってもみませんでした。忌々しい事この上ないですが、ここは一時退却と致しましょう。
ソテルは、ルチアを一時的に諦め、
「全く、騒がしい方ですね。暴れるだけ暴れてお帰りになるとは……片付けをするこちらの身にもなってほしいものです。これは、ロキ様に処理して頂きましょう。全く、ロキ様も困ったお方です。」
「おや、ロキ様はいらっしゃらないようですね……ようやく、動き出して頂けましたか……。」
邸宅内にロキがいないという事は、重い腰を上げようやくソテルの対処に向かったのだろう。
時は少し遡り、突然転移してきたソテルから逃れる為、ルチアと共にロキの階層へと
ロキの階層は、悠斗邸地下迷宮の中でも特に個性的で、赤い空、下を見れば青い海がどこまでも広がっている不思議空間である。
カマエルが謹慎中の今、狂信者ソテルからルチアを守る為には、この場所に逃げ込むのが一番手っ取り早い。一番手っ取り早いのだが……。
「悠斗様、ここは……。」
っといったように、ルチアから質問が飛んでくる。
「ここは、ロキさんの創った階層……。つまり迷宮の中です。ここならあの人も追って来れないだろうから安心して下さい。」
「め、迷宮の中ですか……。初めて入りました。迷宮ってこんなに綺麗な所なんですね。」
「お~♪ 君すっごく見る目があるね! ここはボクの階層。ここならソテルも入ってこれないから安全だよ♪」
ルチアと話をしていると、どこからともなくロキが顕れた。
「ロキさん、
俺がそう言うとロキが「ううっ!」っといった表情を浮かべる。
「そ、そうなんだけどね。やっぱり、あれを止める為には準備が必要なんだよ。ほら、ボクは今、神託を降さない様に他の神々に煩く言われているからさ♪」
「……でっ? 結局どうするか決まったの?」
そう質問すると、ロキが「う~ん。」と悩んでいる。
まだ対応を考えあぐねている様だ。
「あの、悠斗様? 先ほどから……いえ、
突然神様に会って驚いているのだろうか。なんとなく言葉の文脈がおかしい。
「そうだよ~♪ ボクの名前はロキ。君に『悠斗様に手を出したら教会の権威が失墜するほど滅ぼすからね』って神託を降した神様さ♪ 神託を正しく理解してくれて嬉しかったよ。何度となく神託しても全然違う内容で伝わっちゃうから、てっきりボクがおかしいのかなって思っていたからさ♪」
「そ、そうですか……。な、なんで悠斗様は神様と気軽にコミュニケーションを取っているのいるのですか!?」
ルチアさんの様子がなんだかおかしい。
驚愕の表情で俺に問いかけてきた。
「え~っと、偶々?」
「偶々、神と気軽にコミュニケーションとる事なんてできませんよ!」
全くもって正論だ。
とはいえ、本当に偶々だから仕方がない。
「まあ、いいじゃありませんか。まずはあの人を何とかする方法を考えましょう。後このことは絶対に内緒ですよ。」
「そ~だよ~♪ 他の人に知れたら、ボクが天罰を下すからね♪」
「て、天罰っ! か、畏まりました!」
いい具合に、ロキがフォローしてくれた。
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