大司教ソテル襲来①
突然鳴り響いたチャイムに視線を向かい合わせていると、
「悠斗様、聖モンテ教会の大司教様がいらっしゃいました。
「一旦チャイム音を切って、無視でいいんじゃないかな♪」
ロキが首を傾げて無責任な発言をしてくる。
「ロキ様、それは流石に……近隣住民の迷惑になりますし、対応する私の気持ちにもなって下さい。」
まったくもってその通りだと思う。
『カランコロン♪』
そうこう話している内に、またチャイムの音が鳴り響く。
そして、そのチャイム音は徐々に鳴る間隔が狭くなり、ついには……。
『カランコロン♪ カランコロン♪ カランコロン♪ カランコロン♪ カランコロン♪』
外で待っている狂信者がチャイムを連打し出した。
そして、チャイム音がふと聞こえなくなる。
「あれ? 諦めて帰ったのかな~♪」
「いえ、どうやら玄関口の扉に杭を突き刺している様です。傷一つついてはおりませんが、そのまま放置すれば大変な事になるかもしれません。」
確かに、人の家の扉を四六時中、杭で突き刺しているのを見られるのは外聞が悪い。
「う~ん。でも俺、あの人に会いたくないしな~刺されたし……。事の発端はロキにあるんだから、ロキが対処してきてよ。神託を降すわけじゃないし、それなら大丈夫でしょ?」
「いやだな~悠斗様♪ 嫌に決まってるじゃ……じゃなくて、神が門徒の前に直接姿を現すというのもどうかと思うんだよね~。それにボクを信仰する者って大体、狂信的で破滅願望を持った個性的な人が多いからね♪ あまり好んで会いたくないかな~。」
俺と
「……な~んてね♪ わかったよ……ちょっと行ってくるね……。」
そういうと、ロキはトボトボとした足取りで玄関口に向かう。
足取りは重く、行きたくないオーラが強く出ている。
俺の事を思って先手を打ってくれた心意気は嬉しいが、それもこれも自分で蒔いた種だ。自分で何とかしてほしい。
ロキが部屋を出て暫くすると、
「これは拙いですね……。もういっそ邸内に……いえ、被害が少なくて済むように迷宮内で話し合いの場を設けた方がよろしいのかもしれません。」
「えっ、なんで? いま外で何が起きてるの?」
「まだ邸宅内にいるロキ様と、影精霊を次々と屠る大司教様の姿が見えます。」
影精霊を次々と屠る大司教ってどんな存在!?
いや、強すぎるだろ……ってまだロキ邸宅内にいるの!?
「それにロキ様を信仰する者は、何をするか分からない上に、時よりとんでもない事をしでかす方が多いですから……。」
「な、なるほど……。」
凄く納得感がある。
「おや、あれは……まさかユニークスキル?」
「拙いです悠斗様。あの大司教様が
――場面は移り変わり、十数分前の悠斗邸前。
「あらっ! あらあら? おかしいですね。
フェロー王国の王都にある教区教会から
「やはり、あの子が私に降るはずだった神託を横から掠め取っているのですね……。」
強烈な思い込みにより一瞬脳内が怒りで沸騰するも、目の前にある扉を見て目を剥く。
「あら、あらあらあら? こんな所に扉が……なぜ
そして、ソテルがその扉に手をかけるも、一向に扉が開く気配がしない。
「鍵がかかっているのでしょうか? 仕方がありませんね。」
ソテルは扉の横にあるチャイムを一押しする。
「…………。」
しかし何の反応もない。
壊れているのかと思い連打してみるも、まるで反応を得る事ができなかった。
「仕方がありませんね……。」
ソテルは空中から杭を取り出すと、その杭を扉に突き刺す。
しかし、扉はビクともしない。
「なぜでしょう?」
ソテルは次々と杭を扉に突き刺していく。
しかし、ソテルの繰り出した杭は一度たりとも壁を傷付ける事ができなかった。
不思議に思い首を傾げていると扉の前から次々と、黒い染みが浮き出てくる。
そして、その染みが人型のナニカを形取るとソテルに向かい襲いかかって来た。
「あら? あらあら? ルチアにこんな力はなかったはず……これはどなたによるものでしょうか?」
ソテルは杭に
「あはぁ! 効果抜群ですね。」
そう呟くと、ソテルは壁や扉から湧き出る影精霊を次々と屠っていく。
そして数分後、影精霊を屠り終えたソテルはゆっくりとした足取りで悠斗邸玄関口の扉に触れると、頭の中で祈りを捧げそれを口にする。
「ロプト神様。お力をお借りします。」
その瞬間、ソテルの全身を光が包み込み、玄関口の扉が開き出す。
ソテルは光を纏ったその姿のまま扉を潜ると、ゆっくりとした足取りで邸宅内に侵入する事に成功した。
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