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「これは咲耶姫様の大事なものっ。」
火の神様に作ってもらったお気に入りのぐいのみグラスだと言っていた。そんな大事なものがなぜ差し出されているのか。
「受け取れません。」
「いいのだ。咲耶姫には新しいものを作ってくれと頼まれておる。これは咲耶姫の気持ちだ。受け取ってくれ。」
そっと両手で受け取ると、朝日に照らされたぐいのみグラスがキラキラと輝いた。日本酒を注いだときとはまた違った素敵な輝きだ。咲耶姫様との思い出がよみがえり胸が熱くなる。
「大事にしますね。」
「俺からはこれをやろう。」
火の神様の手には一輪の花が添えられている。
私の肩にかかる髪を優しく救い上げ耳にかけると、その花を耳の横の髪に挿した。
「よく似合っているぞ。」
そう言って目を細めた火の神様はとても美しく魅惑的で、図らずもドキドキと胸が高鳴った。
火の神様は屈託のない笑顔をもたらすと、踵を返す。
突然ぶわっと風が吹き抜けて、私は思わず目を閉じた。ゆっくりと目を開けると、そこは自分の家の前だった。
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