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 シチューは限りなく完璧に仕上がった。

 ホロリとほどける肉、やわらかい野菜、濃すぎず薄すぎないフォン。デザートは抹茶まっちゃ柚子ゆずのゼリー添えで、口直しもパーフェクト。


 幸福ゲージは限界突破げんかいとっぱだ。


 さあ、最後のいくさに行かねば。


 私はなまりの足をひきずり、タンスの前にもどった。


 ずずずずず。


 めったに使わないからか、上手くひっぱれない。すごく重い。こわばった音もしている。まるでびたチェーンの自転車に無理に乗ってる感覚だ。


 自分でも何をしまったのか思い出せないので、中の物も錆ついているかもしれない。


 そうだったらとても助かる。


 やっとのおもいで半分ほどひきだせた。これ以上は力が足りない。無理にすれば腕を痛めてしまうだろう。


 どんなものでもかかってこい。


 奥まで見えないので、ぐいっと手を入れて中のものをかきだした。


 白い布だ。三角の、真っ白い。

 なんだ、三角巾か。こんなもの買ったか?

 

 再びタンスをあさる。


 次に出てきたのはひどくよれた白衣だった。

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