第二章【公募】一国の姫の嫁になってくださる淑女
2-1【決意】一国の姫の嫁に憧れて立候補する幼女
第8話 村娘
「姫君と婚姻を結んでくださる御方、だって!?」
「でも見ろよ、お姫様と結婚なのに女性限定って書いてある。誰がでっちあげたかは分からないが、嘘をつくのが下手な奴だねぇ」
「くそっ、なんだよ。一体誰がこんなテキトーなことをほざいてんだよ!」
セレン村の男達は、眼前の掲示物に一喜一憂していた。
まあ無理もない。一国の王女が一片も包み隠さず『私は女が好きな女だ!』と言っているようなものであり、同時に逆玉のチャンスがない事実を叩きつけられたのだから。農作業に戻る背中は心なしか小さく丸まっている。
「ねーねー、なにこれ?」
人の流れに逆らうように、
「海のお姫様が女の子と結婚したいんだってさ。お嬢ちゃんなら結婚できるかもな」
「えー! お、おんなのことおんなのこが、けけけ、けっこん!?」
「――まあ、そうなるわな。でもおかしいことなんかじゃないぞ。例えば、お嬢ちゃんは好きな人とか、大切な人っているかな?」
「いるよ! おとーさんと、むらのみんながだいすき!!」
「それと同じだ。もしかしたらお姫様は、女の子とお友達になりたいのかもな。お友達とずっと一緒にいたいから、結婚する……かもな」
決まりごとのように「かもな」と付け足し、男は鍬を担ぐ。
わたしは家に帰って『かんじ』の勉強をする。大人はみんな覚えてるからすごいよね。昔の人が考えたらしいけど、こんなのいるのかな?でも覚えないとみんなにおバカって言われちゃうからがんばるしかない!
「ただいま……」
「おとーさんおかえり! ……またおしごと?」
わたしのおとーさんは冒険者だ。どんな仕事かは教えてくれないけど、遠くに行って色んなことをするみたい。おとーさんのおかげでわたしが暮らせるからほんとに感謝してる。
「ああ。今度のお仕事はちょこっと危ないお仕事なんだ。でもお母さんに会えるかもしれないから、いてもたってもいられなくて、な……」
「わたしの、おかーさん?」
おかーさん。わたしが生まれてすぐどこかに行ってしまった人。おかーさんも冒険者で、ものすごくお仕事ができて有名な人らしい。いつか会えたらいいなぁ……。
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