杜若―艶冶鬼姫―
幾重に踊る
翡翠の鬼火
光彩のない
眸が笑う
差し伸ばされた
その手に縋り
とうに心は
闇のなか
流れるままの
黒髪に
あえかに揺らぐ
阿片の香り
目眩の様な
歪に溺れ
なんと天地の
曖昧な
雅に響く
楽の音は
地の底よりの
奏でなり
夢と現の
境にて
狂気の沙汰に
囚われる
いっそ この身を
引き換えに
そちら側へと
参りましょうか
凍えた指の
導くままに
眼を閉じ渡る
戻橋
月も死したる
酷薄の宵
暗夜行路の
その先で
わたしは やっと
わたしに孵る
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