グロキシニアの花束を貴方に

【第二章 事件と猫】05

　シャワーを終えて自室へ向かいそのままベッドにダイブした。

「うひゃ～～疲れがぬけていく～」

　こんなにもベッドを恋しく思ったのはいつぶりだろうか？何気に精神や体力をすり減らしていたから無理もないかな～

　なんて思いながらウトウトとし眠ろうと目を閉じようとするが

「な～んか忘れてるような。明日の用意と目覚ましと四日後に控えたテストと・・・・・・ん？テスト？」

　冷汗をダラダラと垂らしながら僕は充電器にささったスマホを片手にある人へ電話する。

『どうした大城～漏らしたか～』

「誰が漏らすか！いやね、気が付いたんですよ僕は大事な事に！」

『何だ！言ってみろ』

「テスト期間近いのに僕らは何をやってるんだってね？！」

　電話を掛けたのはもちろん生姫で僕は高々に生姫へ衝撃の事実を言い放った。

「ヤバいよ！このままじゃ赤点だよ！」

『ははは、面白い冗談だ。切るぞ』

「ちょいまてえ～～！少しでも良いから勉強に付き合ってくださいよお願いします！神様仏様、ゴミ箱様～」

『おい、なんだ最後の？！それに私はお前とは別クラスだぞ』

「それでもなんかあるでしょうに必勝法が！」

　縋る様にして僕は生姫に電話越しであるが土下座をすると

『教えるって言ったって何を教えれば良いんだよ。僕はほとんど勉強しないぞ』

　僕は生姫のその言葉に凍りついた。

　もしやこいつは小説の類で言うノー勉の天才ってやつだろうか

「学年順位は？」

『中間』

　違った！こいつは勉強してもしなくても何故か平均点しか取れない類の種類だ！

　なんて心の中で思いながら冷静を装って

「すみません焦り過ぎて気が動転していました。何でもないです。明日霧縫さんに教えてもらいます。それじゅあ」

　僕はそう言って切ろうとすると

『馬鹿！それだけはやめとけ！彼奴にだけは聞くな！』

　何故だか凄く地雷っぽい言葉を生姫が吐いたので尋ねてみると

『彼奴は宇宙人のたぐいだ。よくわからん脳内回路で勉強しているから人にものを教えるなんて高難易度出来るわけないんだ！よくいるだろ、式はわけわかんないのに何故か答えは全問合ってる奴。ああいう部類だ！』

　なんか友人であろうお方に対してすっごい失礼な言葉を吐いるんですけどこの人。

「ちなみに学年順位は？」

『一位』

　あぁ、的が違ったようだ。射的で言う自分の真ん中の位置にあるでかい的が大当たりだと思い込んでいて実は横の小さな的が大当たりでしたっていうクソみたいな展開のやつだ。

　なんなんだこの二人は！

『まあそういう事だ。どうにか一人で頑張れ！』

　生姫はそう言って一方的に電話を切った。

　最悪に等しい現状に頭を回して正座のまま顔をベッドに突っこんで意気消沈していた僕だがふと思った。

「逆に考えろ、まだ後四日もあるんだ。なんだ楽勝じゃないか！明日から頑張ればどうにかなるさなんたって僕ならなんでもできるさ！」

　なんて現実逃避の言葉を吐きながらベッドから立ち上がって黙々と机に開かれたノートに向かってシャーペンで今までやってきた箇所を復習していく。

　そうして午前一時を差し掛かった所で布団に潜り込み、就寝した。

　　　　　　　　　　　　❃

「おはよう霧縫さん」

　余裕を持って学校へ着き、自分の席へ座ってから僕は隣の霧縫さんに声を掛けた。

「・・・・・・」　

　どうやら勉強しているらしく、耳元に赤いBluetoothのイヤホンが髪の隙間から見えた。

　ピロリンと小気味いい音がポケットから聞こえたのでスマホを取り出してみると生姫からメールが来ていた。

『お昼に夜靄を連れて部室集合』

　なんとも端的なこった。

　僕は霧縫さんの肩をちょんちょんと叩く

「なに？」

　と不機嫌そうにこちらを向いてきた。

「何ってわけじゃないけどこれ、一応伝えておいた方が良いかなって」

　萎縮しながら僕が言うと「そう、分かった」と軽く生姫のメールを見てから勉強へ戻った。

「よお大城！今日の体育もバスケしようぜ！」

　バシンと背中を叩いて言ってきたのは三菱だった。

「あ、うん、オッケー」

　ヒリヒリとする背中を自分でさすりながら三菱に言った。

　四時限目までの授業を終えて五時限目の授業では三菱達とバスケをして僕はなんとも普通な青春を送りながら昼休みになった。

「霧縫さんはっていない・・・・・・」

　バスケから帰ってくると霧縫さんの姿は無かった。

　一足先に部室に行っているのかもしれない。

　僕は一応購買部へ行って命がけで突っ込んで菓子パンを取ろうとするも見事撃沈し、大人しく自販機でげるパインを買ってから何も食べずに部室へ向かった。

　流石に食堂の飯を持っていくのはどうかと思うので一応の固形物であるげるパインで我慢する。

「こんちわ～」

　お昼がなくて気力を無くし気味になっている僕は一応の挨拶と言えるものを言ってから部室へ入った。

　奥の席では生姫が本を読みながら菓子パンを頬張り、横では霧縫さんが自前の弁当を食べていた。

「ぼお、おぞがっだな」

「食ってから喋りやがれ」

　生姫はぼそぼそとご飯で満たされた口で無理やりこちらに喋りかけてきたのでそう注意すると牛乳で飯を胃袋に流し込んでから

「遅かったな大城！そっち座れ」

　そう言って席を指さして促した。

　前と同じく僕は生姫に促されるがままに椅子に座ると

「それではミステリー研究部の会議を始める！」

　でかでかと声を張り上げながら生姫はそう言い放ってすぐさま部室を出ていった。

「・・・あいつ本当にいったいなんなんだよ？！」

　ツッコミも虚しく取り残された僕らは生姫の帰りをただひたすらに椅子に座って待っていた。