第13話 異世界初のペット

王都に逃げ帰った3人はギルドに飛び込んだ


「オークのクイーンが森に出たぞっ」

"ガタガタっ"

「「本当かっ?!」」


ジェシカが報告すると、周囲が慌ただしくなった

「子供が1人でクイーンと対峙してるんだっ。みんな、力を貸してくれっ」

ジェシカは他のパーティー達に掛け合う


「クイーンだぞ?!ジェシカ分かってるのか? 俺たち…いや、王都すら危ないかもしれん。そいつには気の毒だが…諦めろっ」

いかにも戦士風のごっつい男が言った

「それより、何故子供が森に?」

「ウチらについて来たんだ」

「じゃ、子供とはいえ…自己責任だろ」


男たちが言うのも分かる。危険とは知らなくても、森に自分からついて行ったのだ。それにオークの種族上、雌の個体は別格である。過去の文献には魔王まで上り詰めたクイーンもいるのだ


「だがっ…」

ジェシカは何かを訴えようとするも、続く言葉が出ない

お互い分かった上で、これ以上頼むなら…相手に『死んでくれ』と言うようなものだからだ


「イッキくん…」

「くそっ!」

「だ、大丈夫だよね?」

3人はイッキを心配する


「そんなガキより俺達どうする?」

「「あぁ…そうだな…」」

周囲の者たちが悩む。そこへ


「逃げても構わないが、いずれは死ぬぞ?」

ギルドマスターが部屋から出てきた

「王都が落ちれば、いずれ…わかるだろ?」


「「「………」」」


声を出すものはいなかった


◇◇◇


「バレット様、イッキ様見つかりませんね…」

騎士の1人が言った

「はぐれる方が悪いのよ」

バレットはクシで髪を溶かしながら答えた

イッキの事はこれっぽっちも考えてない。

彼女は今、旅で傷んだ髪が1番の心配ごとだった

彼女は騎士に向かって言う

「お腹が減れば現れるでしょ」



◇◇◇




「む、ごごご…ぷはぁ」

苦しいと思ったら、おっぱいか…

そういえば、8年ぶりだったからハッスルしまくって寝ちゃったね

"モミモミ"

ん?

……

「きみ、誰っ?!」

知らない女の人が隣で寝ている

かなりの美人だ。それに女の白い髪が特に際立って更に美人度を上げる


…とりあえず整理してみよう

「んー、居酒屋で酒飲んで…えっと、お姉さんと意気投合して。それから…お持ち帰りした?」

という線はある…かもしれないね


「ご主人様、よく分かりませんが違います」

綺麗で美人な女性が言う

うを?! 起きてたのかっ

確かに居酒屋はないな。まだ寝ぼけていたようだね


「ご主人様って?…僕のこと??」

「そうですよ」

「そうですよって…きみ誰?」

「ご主人様に女にしてもらったオークです」


?!

そういえば、頭についてる耳なんかオークっぽいけど…。というか、見た目が完全に人間の女性だよね?

「随分と変わったね…」

オークっぽい耳を触ってみる。うん、本物だ

「やんっ」

やんって…可愛らしさ満点じゃないですか

おっと、乳繰り合ってる場合じゃないぞ。おそらく心配して、僕の帰りを待ってる彼女達に早く顔を見せにいかないと。


「あのさ、僕王都に行かないと行けないんだよね…」

話した途端、しょんぼりするクイーン

「どったの?」

「私もお供して、よろしいでしょうか?」

僕と一緒に来たいというクイーン

人間に見えなくもない…。獣人ってことにすれば、問題は無さそうだ。

「いいよ。一緒に王都に行こう」

クイーンが嬉しさのあまり僕に抱きついた


……

「あのさ、きみのお股の毛が胸に当たって、くすぐったいんだけど?」

慌てて離れるクイーン。そしてお股を手で隠す

きみ毛深いから…手からはみ出してるし

「それはそうと、きみの名前はなあに?僕は一樹…いや、イッキだよ」

先ずは自己紹介だよね。出会って直ぐやっちゃったけど


「私に名前はありません。今まで配下からも、クイーンとしか呼ばれたことありませんでしたし」

名前がない…不便だな

「あのっ。私に名前を下さらないでしょうか?」

クイーンは期待と不安が入り混じった顔をして僕を見る

「それはいいけど…クイーンじゃダメだよね?」

「……」

うん、ダメだとな。

クイーン…クイーン…んー、前の世界でクイーンってったら、エリザベス?

エリザベス…長いな。エリザかベスか…

「ベス?」

あえて無い方から言ってみた

クイーンは無反応だ。名前がなんとなく犬っぽいよね?豚なのに。


「じゃ、エリザかな?」

言った途端、クイーンは目を輝かす

「わ、私はエリザ。ご主人様よろしくお願いします」

「うむ。くるしゅうないぞ」

名前を無事にあげれた事で、ちょい態度がデカくなる

よし、服を着て出発だ。

……

「…エリザ、服は?」

「ありませんよ?」

首を傾げながら、ご主人様何言ってんの?みたいな顔をする

出発は延期だ。服をどうにかしよう

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