第31話インフルエンサー
昼食を食べ終えてなんとも幸福な気持ち。
お腹も膨れて、もうどこにも動きたくない。
そんな気分だ。
「先輩ぃ〜もう動きたくないです〜」
「凪くん〜私もぉ〜」
二人とも完全に酔っ払いみたいになっている。これでも一応未成年です。
とりあえずお店の迷惑になるだろうと思い、会計を済ませたはいいものの、することが無い。あまりにも暇だ。
来てみれば、することなんていくらでもあると思っていたのに、案外そんなこともなかった。
「先輩、喫茶店にでも入って軽く休みませんか?」
「うん。私もそれがいいと思う」
中華街に来たのに喫茶店。中華街にきた感が薄れていく。
俺たちは中華街から少し外れたレトロな感じでおしゃれな感じの喫茶店に入った。
俺は微糖のコーヒー。先輩はブラック。
ブラックは苦くてまだ飲めません。
お子ちゃまな舌を持つ俺です。
「他にはなにか頼みます?」
「今はいいや。お腹いっぱいだし」
俺もお腹いっぱいだし、何も食べる気にはなれない。
ただゆったりとした空間でコーヒーを飲むなんて大人っぽくない?
大人なのはブラックのコーヒーを飲む人ですよねすいません。
いつか飲めるように頑張ります。
「今日はずいぶんとはしゃいじゃったね。疲れちゃったよ」
「先輩はずっと楽しそうにしてましたもんね。そりゃ疲れもしますよ」
「でもここはいるだけで浄化されそう」
俺たちが今座っているのは、店内の中でも奥の方で日も当たらず、クーラーから出てくる風がいい感じに当たる席なのだ。
調べて一発で出たところだったんだが、案外いいところを引いたな。
「このままぼーっとしてると、ただひたすらに時間が流れていきそうですね」
「でもずっとぼーっとしたくもなるよね」
何なら寝れそう。そのくらい唯花先輩といるのは落ち着く。
――パシャ
……………
――パシャ
……………
――パシャ
ん?何の音だ?
気づくと唯花先輩は俺のことを撮っていた。
「ちょ、唯花先輩消してくださいよ」
「やだ、私もこれストーリーに上げて噂されたいの」
噂されたいってなんだよ。
俺はもうこりごりだよ。まだ桜庭先輩との関係を聞かれる時があるんだぞ。
火のない所に煙は立たないっていうけど、もう煙だけ上げるのやめてもらっていいですか?なら付き合って火までつけちゃいましょう。
とか言ってみたい。
「凪くん……ダメ……かな」
少しうるんだ目でこっち見るのやめて……首を縦に振っちゃうから!!
あぁ。上目遣いまで……もう縦に振るしかないじゃん。
「わかりました。いいですよ」
俺はこの先を想像して大きなため息を吐くのであった。
◇◆◇
結局あのままカフェで数時間も時間を費やしてしまった。
二人ともつかれたから帰ろうってことになっているんだが、さっきから先輩の。携帯の通知が鳴りやまないらしい。
どうやら八割は男子らしいのだが、その通知を見てやけにユイカ先輩が嬉しそうにしているのが謎だ。
何かいいことあったっけ。
思い切って聞いてみることにした。
「唯花先輩?さっきから通知がすごいですけど、何て来てるんですか?」
「気になる?」
「まあ、少しだけ」
めっちゃ気になります。
「仕方ないなぁ。凪くんには特別に教えてあげるよ。これはね……」
先輩が意味ありげに溜めるので思わず息をのむ。
「男の子から、凪くんのことを問い詰める連絡でした~」
どういうこと……?
「つまりは、もう噂され始めちゃってるってことだねっ!」
うわぁ。もう唯花先輩はインフルエンサーじゃん。
この人普通に学校単位で動かしそう。ていうか、教師の一人や二人を自分の手ごまに加えてそう。
それだけ成績も優秀だし、生徒会長なんていう重要な役職を務めているのだから、全教師からの信頼も厚いしな。
だんだんと話がずれていたが、もう噂されてるとか今度こそ学校での居場所がなくなるじゃん。どうしよ、トイレでご飯食べるみたいなことになりそう。
それは嫌だな。
まあ、さっきも言った通り火のないところに煙は立たないんだから、おれは堂々としてればいいんだよな。
もう半ばあきらめ半分でそう自決したのであった。
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