第38話 美少女テロリストとつぶやき機能
会議室での閣議で、俺は動画戦略について、オウカたちに説明していた。
「とにかくオウカおよび、各部隊の隊長たちが出る動画を増やすんだ。テロリストのイメージを払拭し、誰が統治者かわかるようにする。そしてお前たちだけじゃなくて、パシク国解放軍メンバーはツイチューブのつぶやき機能を積極的に使うんだ」
「つぶやき機能とは、確か今何をしているか、何を考えているかなどの文章を投稿する機能だったな?」
オウカの問いかけに、俺は頷いた。
「そうだ。そこで国の為にいかに働いているかをアピールするんだ。これから視察に行く、苗を届けに行く、堆肥作りが順調で嬉しい、何の収穫が始まったとかな。地元民と一緒に映っている写真があるとなおいい。若くてフレッシュな可愛い女の子たちが国の為に働いている様を見て、嫌な顔をする人はいないだろう。新政府は自分らのために頑張ってくれている、その実感を与えるのが大切なんだ。ただし、炎上とバカッターには気を付けるように」
「スマホが爆発するのですか?」
「カッターナイフの一種でありましょうか?」
疑問符を浮かべるナナミとカナの問いかけに、俺は首を横に振った。
「爆発でもナイフでもないよ。炎上は悪い呟きをして大勢から非難されることだ。国民に反発された苛立ちに任せて『無能な国民マジムカつく』なんて呟いたら信頼を失うだろ?」
「あはは、そんなバカなことする人いませんよ」
「いるんだよなぁ、世界中に」
「え……?」
ナナミは固まった。
「あとバカッターっていうのは、自分の犯罪を自慢げに投稿しちゃうことだよ。日本だとバイトテロが有名かな。飲食店で働いている奴が食べ物で遊んだり不衛生なことをしている写真を撮って『こんなことしちゃいました面白いでしょ?』て感じで投稿して捕まるんだ。他にも立ち入り禁止区域に入っている自撮り写真とか、物を壊した写真を撮影して器物損壊で捕まる奴とか」
「日本にはそんな輩がいるのですか?」
カナが、眉間にたくさんの縦ジワを集めて、げんなりとした。
「いるんだよなぁこれが。まぁ、ネットが人を狂わせるとか言う奴もいるけど、俺からすると逆だ。馬鹿に技術を持たせた結果だ。ツイチューブは馬鹿製造機じゃなくて馬鹿発見機だよ」
滔々と説明する俺に、オウカが喉を唸らせた。
「どうしたショウタ、今日は随分とやる気だな」
「姉様の夫なら当然なのです」
「つまりはおっぱい効果でありますな」
「そんなんじゃねえよ! たく、俺だってさっさと安定政権になって貰わないといつ殺されるかわからないからな」
前回の一件で、大臣業にちょっとやる気を出したとは言えないので、そう言って誤魔化すも、オウカは口元に怪しい笑みを浮かべていた。
確実に、本心を見透かされている。
「ああもう、とにかく次の議題だ。うちの国に必要なものをまとめるぞ」
語気を強めて、俺は弁舌を振るった。
「そもそもの問題点は大きく分けて七つ。
衛生問題は、これは井戸水と石鹸で解決済みだ。
食料問題は、ゴボウ、ワカメ、イナゴ、セミ、カエル料理を食べて貰いつつ、新しい作物でギリギリなんとかなっている。餓死者はいないから、一応解決済みだ。
治安問題は、酒と引き換えに働かせることで刑務所の暴動はなくなった。ただし街のゴロツキとかの問題はある。これは今後、経済発展して雇用が増えれば解決するだろう。
人材問題は、みんなが政治業務になれてきたし、カナやナナミが秘書としていい仕事をできるようになったから前よりはだいぶマシになった。あとは将来的に学校教育に手を入れて優秀な公務員を増やしたい。
国王派の残党問題は、前に一部のグループを一斉逮捕して以降、連中はおとなしいし、俺らの支持率が上がっていることで、国王派に同調する人も減った。ミイネのお陰で財界の人々も協力的だしな。残るは、金と物資不足だ」
声を引き締め、俺は今一度、みんなに現状のまとめを報告する。
「各種物資を手に入れるには生産業を成長させないといけない。けどひと月やそこらでどうこうできるモノじゃない。国内生産が無理なら海外から輸入という手もあるけど、新産業が軌道に乗って海外貿易ができるのは来年以降だ。そして輸出産業発展のためには、各種農業機械を導入したいし、先進国との貿易が必須だ。この状況を打開する方法、それは、俺の祖国、日本のODAだ」
「ショウタ、ODAとはなんなのですか?」
「簡単に言うと、外国に資金、物資、技術的支援をすることだ。日本は150以上の国にこのODAをしている。2008年のときは181国にODAをした。その対象にパシク国も入れてもらおう」
「えぇ!?」
途端に、ナナミは冷や汗を流しながら、気まずそうにそっぽを向いた。
「ん? どうしたナナミ?」
「いや、なんでもないです……」
「あー、もしかして散々先進国のことが嫌いとか俺のことを苦労知らずのお坊ちゃまとか馬鹿にしておきながらその日本が貧しい国の為に滅茶苦茶支援していたから気まずいのか?」
ぎっくーん、と肩を跳ね上げてから、ナナミはもじもじと肩を揺すった。
「そ、そんなことないですよぉ」
わかりやすいなぁ。
そんなナナミを見守るオウカたちの眼差しが優しかった。みんな、ナナミの可愛さに癒されていた。
ナナミって愛されているなぁ、と思いながら、俺は話を再開した。
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