第115話 闘志を燃やすドーナと目論むミカミ


 朝食を食べ終えた後、俺とミカミさんはギルドへと足を運んだ。他のみんなは、出発準備を整えてもらっている。


 早速ギルドの中に入ると、昨日営業をした場所にミースさんが机と椅子を用意して、俺たちの到着を待っていた。


「おはようございますミースさん。」


「ミースちゃんおはよ〜!!」


「あ、ヒイラギさんにミカミさん。おはようございます!!」


「まだ受け取りに来た人はいないみたいですね。」


「受け取り時間を一応10時からにしてましたので、皆さんそのぐらいの時間に来ると思いますよ。」


「なるほどです。じゃあ、これをお願いします。」


 俺はマジックバッグから箱詰めしたケーキをどんどん取り出して、ミースさんに手渡していく。


「わっ……こ、こうして見るとすっごい量ですね。」


「68個だからね〜、ホント作るのは大変だったよ。」


「それなら従業員を雇ったらどうでしょうか?一応ギルドからも人員は派遣できますよ?」


「それは今考えてる最中なんだよね〜。万が一本当に人手が足りないって思ったら、ミースちゃんに声掛けるよ。」


「はいっ!!いつでもお声がけください。」


 そしてミースさんは予約注文のリストを確認しながら、ケーキの数を数えていき、すべて数え終わった後大きく頷いた。


「68個、確かに受け取りました。後はお任せくださいっ!!」


「よろしくお願いします。」


「お願いねミースちゃん。」


 ミースさんに後のことをお願いした後、キョロキョロと辺りを見渡してみるが、今日はドーナさんの姿がない。それが少し気になって、ミースさんに聞いてみることにした。


「今日はドーナさんは居ないんですか?」


「あ、ドーナさんなら先ほど討伐依頼を受けて、現地に向かいました。」


「そうなんですね。」


「ふふっ、ドーナさんは、どうしてもヒュマノファイトで優勝したいみたいですよ。ヒイラギさんも出場するんですよね?」


「あはは……ま、まぁそうですね。」


「決勝戦でドーナさんとヒイラギさんが戦うのを、私すっごく楽しみにしてますから、頑張ってくださいね!!」


「ね〜、今からヒュマノファイトの決勝戦が楽しみで仕方がないよぉ〜。」


 嬉々としながら話すミースさんに、ミカミさんは相槌を打った。


「なんでもドーナちゃんが惚れるのは、自分よりも強い男の人だけって言ってたからね〜。」


 ドーナさんと初めて出会った時に、彼女がミカミさんに向けていった言葉をずっと覚えていたらしく、ミカミさんはニヤリと笑う。


「ヒュマノファイトで柊君がドーナちゃんを打ち負かした時に、ドーナちゃんがどんな反応をするのか……そして、その後から柊君に対してどういう風に対応が変わるのか……今から楽しみで仕方がないよ。」


 どす黒い雰囲気を醸し出しているミカミさんを見て、思わずミースさんも軽く引いてしまっている。


「ま、まぁまぁ……とにかくヒュマノファイトまで頑張って実力をつけてきます。」


「は、はいっ、期待してますね!!」


「あ、それから次の予約注文は、7日後の朝で予約を締め切ってもらって、締め切った翌日にまた届けに来ますね。」


「わかりました。商品の受け渡しは8日後で締め切りは7日後の朝までですね。」


「はい、お願いします。」


 次の予約注文のこともミースさんにお願いしてから、俺とミカミさんはギルドを後にして、みんなと待ち合わせている町の関所へと足を運ぶ。


「ミカミさん、そろそろこれから何をするのか教えてもらっても良いですか?」


「ん〜、そうだね。あんまり勿体ぶってもあれだし……教えてあげようか。」


 ミカミさんは胸ポケットから飛び出して俺の肩に飛び乗ると、これから行う事について話してくれた。


「これから私達は、アサシンギルドの本部に殴り込みに行くんだ。」


「…………ルカがあんなに驚いていた理由がわかりましたよ。」


「あっはっは、あの顔は最高だったね。まさに度肝を抜かれたって感じの表情だった。」


「でも、何の為にアサシンギルドに殴り込みになんて……。」


「それはもちろん第一は私達のためさ。アサシンギルドっていう存在が、この世にあり続ける限り、私達を狙う者は後を絶たないだろう?ルカちゃんも面倒だろうから、この際存在ごと叩き潰してしまおうってわけさ。」


「そ、そんな簡単にできますかね?」


「大丈夫さ、私が思うにルカちゃんほど強い輩は、もうアサシンギルドには残ってない。唯一可能性があるとしても、アサシンギルドの長って人ぐらいじゃないかな?ま、そいつだってただの守銭奴に変わりはないよ。負ける要素なんて何一つ無いっ!!」


「ハッキリ言いますねホント……で、その後はどうするんです?」


「その後は、たんまりとお金を貯め込んでるアサシンギルドの重役達から、迷惑料を回収するのさ。」


「まぁ、ルカの話を聞いてる限り、めちゃくちゃお金を貯め込んではいそうですけど……そう簡単に回収できますかね。」


「するんだよ。どんな手段を使ってでもね……ふふふ。」


 この時のミカミさんの笑みには、文字通り悪魔が取り憑いていたように見えるほど、凶悪なものだった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る