意外なユリの本性


 宴会の料理もなくなってきて、鍋の締めを味わう時間になってくると、辺りではエルフが獣人や人間と話している光景がちらほらと見える。みんなお酒が入っているから、エルフたちも多少フレンドリーになっているらしい。


 幸いなのはこの宴会に招かれている人たちは、酒癖の悪い人はいないようで過激な絡みをしている人はいないということだ。


 ある一人を除いて……。


「母上ぇ〜、大好きだぁ〜ぞぉ〜♡」


 すっかり酔いが回ってしまったユリは、母親であるカリンにぎゅ~っと抱きついている。


「こ、こらユリ!!こんなところで甘えてくるな!!お前は酒癖が悪いから、ほどほどにしろとあれほど言っただろう。」


「だってぇ〜、こうでもしないと母上に甘えられないんだもーん。」


 そしてユリはカリンの頬にスリスリと自分の顔を擦り付けると、愛おしそうにカリンの頬に何度も何度もキスをする。


「た、大変そうですね。」


 ユリの愛を一身に受け止めているカリンに、思わずそう声をかけた。


「いや、こういう席ではいつものことなのだ。もう慣れたものよ。」


 やれやれとカリンは一つ大きくため息を吐いた。


「本当のユリはこんな感じで甘えん坊なのだ。普段は押し隠しているがな。故に酒を飲み、酔いが回るとこんな感じで溜まっていたものが爆発する。」


「まぁ子どもに愛されてるのは良いことなんじゃないですか?」


「悪い気はしないな。」


 そう話している間にも、カリンの顔にユリのキスマークがたくさんついていく。


「ユリ、此方の指を見ろ。」


「わかったぞ母上!!」


 カリンは妖しく人差し指の先端を光らせると、ユリにそれを凝視させる。すると、ユリの目がトロン……ととろけ始め、終いにはスヤスヤと寝息を立て始めてしまった。

 眠ってしまった彼女を空いている椅子に座らせると、カリンはさっきまでのお返しとばかりにユリのおでこに一つ口づけした。


「ふっ、愛しい我が子よ。今は眠れ。」


 そして再び彼女は自分の席に座ると、こちらに空になった盃を差し出してくる。


「一献もらえるか社長。」


「もちろん。」


 カリンの盃に酒を注ぐと、今度は彼女が酒の入った瓶を手にしてこちらにずいっと差し出してくる。


「此方からもお返しだ。」


 俺の盃にも彼女はお酒を注いでくれた。


「今後ともユリの事……そしてエルフの事を頼んだぞ社長。」


「任されました。」


 盃をお互いにコン……と合わせ、その誓いの酒を一気に飲み干した。

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