宣伝効果は如何に…


 翌日……朝起きてみると、早速異常に気がついた。


 俺がフィースタから借りている部屋は屋敷の2階にあるのだが、ここからでも外の騒ぎが聞こえてくるのだ。


「宣伝成功かな。」


 そしてせっせと着替えていると、部屋の扉が勢いよく開いて、フィースタが入ってきた。


「あ、あのっ、外が大変なことになってます!!……って、はわわっ!!お、お着替え中にすみません!!」


「いや、構わない。それじゃあちょっと行ってくるよ。」


 身なりを整えてから、屋台のある屋敷の外に向かうと、集まっていたエルフ達の視線が一気に俺に集中した。


「昨日のお菓子買いに来たわよ~!!」


「早く作って〜!!」


 すでに待ち切れない様子のエルフが、フィースタの屋敷の前に大量に詰めかけていた。


「これは大盛況だな。」


 急いで屋台の準備を整えて、どら焼きの皮を焼き始める。すると、列の先頭に昨日宣伝をしてくれた二人のエルフの姿を見つけた。

 その二人に屋台で作業をしながら声を掛ける。


「宣伝ありがとう。おかげさまで大盛況みたいだ。」


「人間のお兄さん、お菓子とっても美味しくて、友達たくさん呼んできたよ!!」


「あれだけ美味しいものを独り占めってのも、なんか勿体なかったし……か、感謝しなさいよね。」


「あぁ、本当に助かったよ。」


 真っ先に二人にできたてのどら焼きを手渡した。


「二人は今日も無料だ。よかったら明日も食べに来てくれ。」


「やった!!人間のお兄さんありがと~!!」


「ま、まぁ気が向いたら明日も来てあげるわ。……ありがと。」


 そして二人がどら焼きを食べながら去っていくが、まだまだエルフが大名行列を作っている。これを全て捌き切るのはなかなか骨が折れそうだ。


 一つ気合を入れて、接客に当たる


「いらっしゃいませ、どら焼き1つ銀貨1枚です。」


「このお菓子どら焼きっていうんだ……。何個買ってもいいのかな?」


「大丈夫ですよ。」


「それじゃあ……どら焼き10個!!」


「ありがとうございます。」


 せっせとどら焼きを売りさばいている最中、見知った顔が行列の先頭に現れた。


「やあ人間くん、商売繁盛してるみたいだねぇ〜。」


「おはようリコ。これもリコが作った小豆が美味しいからだよ。」


「またまたぁ〜、キミの腕がいいからでしょ〜。」


「そんなことはないさ。それで、何個買っていくんだ?」


「えっと、農場で働いてるみんなにも差し入れしたいから……30個ぐらい?」


「30個だな。ちょっと待っててくれ。」


 そして30個に少し色を付けて、どら焼きをリコに手渡した。


「おぉ~、ありがとね〜。」


「また今度新作のお菓子作るから、その時は試食頼むな。」


「お任せ〜!!それじゃ頑張ってね〜。」


 リコもドラ焼きをたくさん抱えて去っていく……。しかし、まだまだ行列は途切れる様子はない。行列の整備をしてくれているフィースタも大変そうだ。


 行列をさばき切ったら、材料の補充とかも含めて一度休憩を挟もう。


 そして更にペースを上げて、俺はどら焼きを売りさばいていくのだった。

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