国王の最期


 振り上げられた尻尾が再び振り下ろされるのは、自明の理である。


「そんな、ばかn……。」


 必死に衰弱した体で逃げようとした国王だったが、あえなく落ちてきた尻尾に潰されてしまった。あの重量に潰されては生きてはいないだろう。指示を出すために足元にいたのが仇となったな。


「主よぉ~、ようやくワシとツガイになってくれるのじゃな!?」


 嬉し涙で表情がぐちゃぐちゃのまま、レイは俺にそう問いかけてきた。


「ひ、ひとまずその話は……あ、あとでゆっくりしよう。一回離してくれないか?」


「嫌じゃ!!もうこの手を離したりはせん!!」


 俺のことをギューッと力強く抱きしめながら、レイは何度も何度も尻尾を床に叩きつける。


「むっ!!そういえばワシのことを操ろうとした愚か者はどこに行ったのじゃ!?この手で叩き潰してやらねば気が済まぬ。」


「そいつならお前の尻尾の下敷きになってるよ。」


 そう指摘してやると、レイは自分の尻尾を持ち上げた。純白の尻尾にべっとりと鮮血がこびりついている。


「なんとも惨い死に様じゃ。」


 尻尾を持ち上げて、しかめっ面になりながら彼女は、ほぼ原形のない国王の死体を見て言う。


「悪事を働く者の最後はいつだってそんなもんだ。」


 悪いことに手を染めたやつは、良い死に方はしない。どこの世界でもそれは変わらない。


「さて、レイ。さっそく一つ頼みごとをしたいんだが……頼めるか?」


「もちろんじゃ!!このになんでも申し付けるがよいぞ主っ!!」


「それじゃあ、街の中で今頃魔物が暴れてると思うから、そいつらを倒してきてくれるか?」


 きっと今頃、洗脳が解かれた魔物が暴れ狂っていることだろう。街の人達を守らなければならない。


「むふふふ、承知したのじゃ。行ってくるぞ主っ!!」


 そして彼女は王城の壁をぶち破り外へと出ていった。


 城の壁を壊すんじゃない……とツッコミをいれたかったが、すでに彼女は遥か先に行ってしまっていた。まぁでも彼女がいれば魔物の鎮圧はすぐに終わるだろう。

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