シンのジレンマ


 クルリと後ろを振り返ると……。


「ふふっ♪」


 イリスが微笑みながら自分のことを指差していた。私の分は?と言いたいのだろう。


「イリスの分はランが持ってるはずだぞ?」


「ホントですか!?ランさ~んお土産く~ださいっ♪」


 ランがお土産持っていることを知ったイリスは、ソファーに腰かけていたランのもとへと向かった。


「イリスのお土産は……これよ。」


「これは、クッキーですね?」


 イリスへのお土産は、きれいに焼かれたクッキーだった。果物をジャムにしたものがのせてあったり、様々な種類のクッキーが包みに入っている。


「イリスよく紅茶飲むでしょ?だからこういうお菓子にしたんだけど……」


「嬉しいです。ありがとうございますっ♪」


 ランの言うとおり、紅茶をよく飲むイリスにはピッタリのお土産だな。


 さて、皆にお土産も行き渡ったし少し休憩しようかな。いつものソファーに腰かけてコーヒーを飲む。


「ふぅ……。」


 コーヒーを飲んで一息ついていると、シンが正面のソファーに座った。


「して、例の国の重役達はどうだったのだ?」


「あぁ、やっぱり洗脳されてたよ。」


「やはりか……だがその重役らの洗脳も解除したのだろう?」


「もちろん。ちゃんと協力も得られた。」


 多分王都に戻ったらすぐに動いてくれることだろう。


「だが、大丈夫なのか?重役ということは、国王に会う機会も多いはずだ。洗脳を解かれていることがバレてしまわんか?」


「それなら心配ない。彼らは王都でやることをやったらこの街に戻ってくる手筈だ。」


 それに王都でやることと言っても、そんなに時間はかからないはず。1日2日位で終わらせて、この街に戻ってきてくれるはずだ。


 王都に長く留まれば留まるほど、国王に動きが感づかれてしまうリスクが高くなるからな。彼らもそれはわかっている。


「そうか、なら安心か。」


「あぁ、きっと大丈夫だ。」


「……またしても信じることしかできぬのだな。」


「歯がゆいけどな、仕方ないさ。」


 彼らを信じないことには始まらない。今、俺達にできるのはそれだけだ。


「我にも何かできることがあればよいのだがな……。生憎、今は力になれそうなことがないのだ。」


 ぼやくようにシンは言った。本当はこんなことになっていなければ、シンが活躍することができる場面がたくさんあったはずなんだが……。


 さすがに今の状況でシンのことを、他の誰かに見られるわけにはいかない。

 歯がゆい思いをさせてしまっているのはわかっているが、もう少し辛抱してほしい。

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