酔いが覚めたフレイ


 マーレを出てハウスキットへ向かっている途中……。


「ん、ふぁ……。」


 背中でフレイがあくびをしながら背伸びをしていた。どうやら起きてしまったらしい。


「ふぇっ!?な、なんでボクっ……。」


 背中からフレイの驚く声がする。


「ん?もう酔いが覚めたのか?」


「あぅ……な、なんでボク、ヒイラギさんにおんぶされてるの?は、恥ずかしいよ。」


「あら、覚えてないの?」


「お祭りで甘い飲み物を飲んだのは覚えてるんだけど……そこからの記憶がないよぉ。」


 その甘い飲み物っていうのが、アルコールが入ったお酒だったんだろうな。それで酔ってからの記憶はないと。


「フレイが飲んだのはお酒だったんだ。それで酔っぱらっちゃって、今までの記憶がないんだろう。」


「お酒?あれお酒だったの!?ボク、お酒弱いのに……ぼ、ボク…変なこととかしてないよね!?」


「大丈夫だ。特に気にする必要はないぞ。」


 本当はいろいろあったが……。まぁ言ったら気にしてしまいそうだからな。別に言わなくてもいいだろ。ドーナ達も黙ってくれてるしな。


「そ、そっか。よかったぁ~安心したよ。」


 背中でフレイがホッと胸を撫で下ろしているのがわかる。


「あっ!!そういえばご、ごめんね。ずっとおんぶしてもらっちゃって……重かったでしょ?い、今おりるよ。」


「別にこのままでもいいぞ?多分まだ足取りも覚束ないだろうし。」


 むしろ最初おんぶしたときは、軽すぎてビックリしたぐらいだからな。


「で、でも……。」


「いいじゃない?たまには言葉に甘えるってことも大事よ?」


「そうそう、無理して怪我されても大変だからねぇ~。」


 フレイを後押しするように二人が言った。二人がこんな風に言うなんて珍しいな。酔っぱらっていたフレイとなんかあったのかな?


「ま、二人もこう言ってくれてるし、もう少しで着くからゆっくりしてていいよ。」


「うん、わかった。ありがとう。」


 そこから少し歩くと、明かりがついた建物が見えてきた。今ごろシン達が腹を空かせて待っていることだろう。


「そういえば、リリン達にお土産は買ったのか?」


「もちろん買ったわよ~。」


「それを聞いて安心した。」


 買って来なかったら、後で何を言われるかわかんないからな。シンなんかは、食べ物には目がないから妬まれそうだ。


 そんなことを思いながら歩いていたら、あっという間にハウスキットの前に着いてしまった。

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