サラマンダーの肉の味


 みんなが美味しいって絶賛してるサラマンダーはどんな味だろうか。


 期待で胸を膨らませながら、一番素材の味が分かるステーキをフォークで刺して口へと運ぶ。衝撃的なことに、舌の上にのせた瞬間に甘い肉汁がジュワっと溶けだした。

 味わうように咀嚼すると、濃い旨味が凝縮された肉汁がどんどん口の中を満たしていく。脂も全然しつこくない、いくらでも食べられそうだ。


「……美味い。」


 この世界に来て食べた食材の中でダントツで美味い。竜種の肉はこんなに美味しいのか……ワイバーンも美味しかったりするのかな?

 チラッとグレイスに視線を向けると…。


「ひ、ヒイラギさん何か視線が怖いっす。」


 視線に気が付いたグレイスは体をビクッと震わせ、冷や汗を流しながらこちらを向いて言った。


「いやな、サラマンダーって竜種だろ?グレイスも一応竜種…だよな?」


「じ、自分は美味しくないっす!!食べても不快な思いをするだけっす!!……たぶん。」


 必死に自分は美味しくないとアピールをするグレイス。翼膜のついた両手をブンブンと振っている姿はどこか愛らしい。

 そこにジルが助け船を出した。


「私の店に以前ワイバーンの肉を仕入れたことがありますが……硬くて血生臭くて、とても食べれたものではありませんでしたな。」


「ふむ、そうか…ちょっと残念だ。」


「そ、そこまでボロボロに言われるとちょっと悲しいっす。」


「まぁ良かったじゃない?これで非常食として食べられることはなくなったんだから。」


「自分非常食だったんすか!?」


 ボロボロに言われたグレイスが落ち込んでいるところに、ランが追い討ちをかけるようにからかい始めた。

 ランも本当に誰かを弄るのが好きだよな。


「ふふっ♪冗談よ?」


「ランさんが言うと冗談に聞こえないっす!!」


 ランがグレイスをからかっている様子を少し笑いながら見ていると、シンが俺に話しかけてきた。


「ヒイラギよ、今日という今日はお主にも酔っ払ってもらうぞ?」


 そう言ってシンは円卓の上に一つの酒を置いた。


「これは?」


「これは象人でも酔っぱらうと言われている…我が国の中で最も酒精が高い酒だ。芋酒の二倍は効くぞ?」


「ふむ、俺が飲むのは構わないが…シンはこんなの飲んで大丈夫なのか?」


「我のことは心配せずともよい。今日のヒイラギが酔っぱらう事が最重要事項なのだ!!」


 う~ん、よっぽどの事がない限り俺は酔っぱらうことはないのだが、まぁものは試しだな。盃にトクトク…と注がれたその酒を手に取りグイッと飲み干した。

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