栄光の裏で…

???side


「ナルダ様ッ!!ナルダ様ァッ!!」


 ドンドンとあわただしく部下が部屋の扉を叩く。


(いったい何事だというのだ騒々しい。)


 少し苛立ちながらもベッドから体を起こし扉を開ける。


「何事だ。」


「ご、ご報告致します!!獣人族の国へ向かったエンリコ様が討たれました!!」


 報告に来た部下のその言葉を聞いて、意識が一気に覚醒した。


「エンリコが討たれた……だと?詳しく教えろ。」


「ハッ!!偵察部隊の報告によりますと、一時エンリコ様は転生者と交戦し、追い詰めていたのですが突然影から現れた何者かに不意打ちを喰らい絶命致しました!!」


「まんまと相手の策にハマったか。」


 エンリコはあれでいて頭がよく回る。相手を欺くことを得意としているからな。

 しかしそれでも尚やられたか……。


「その後はどうなった?」


「そ、その後と申されますと?」


「エンリコが死んだのなら、血の盟約が発動したはずだ。それでもなお逆転されたというのか?」


「い、いえ……偵察部隊の報告にそのようなものが発動したという報告はありません。」


「何だと!?」


 血の盟約が発動していないということは、つまりそういうことだ。


「クッ、エンリコが生け捕られたな。」


 だとしたらかなり不味い。我々幹部にはイース様との血の盟約以外結ばれていない。

 つまり情報漏洩に対する盟約の拘束が一切無い。生け捕られたということは、情報を抜き取るべく尋問されることは間違いない。


「サンドラにこの事は伝えてあるのか?」


「い、いえまだサンドラ様の元へは行っておりません。」


「今すぐ行け。そして緊急で会議を開くと伝えろ。私はイース様にこの事を伝えてくる。」


「ハッ!!ただちに!!」


 伝令の部下はサンドラのもとへ走った。


「さて……この失態どう報告するべきか。」


 扉を閉め黒塗りの女神像に跪き、目を閉じ祈りを捧げた。


「失礼致しますイース様……緊急のご報告が。」


「※※※※※※」


「ハッ……エンリコが転生者どもに生け捕られ、情報が漏れる可能性がございます。」


「※※※※※※」


「エンリコの代わりに新たな幹部を……ですか?」


「※※※※※※」


「承知致しました。それではエンリコはここで切り捨てます。今後の計画はどうされますか?」


「※※※※※※」


「ではそのように致します。」


 そして声が聞こえなくなり目を開ける。


「リガルド、いるか?」


 私が問いかけると、後ろに黒装束を身に纏った魔物が跪いた。


「ここに……。」


「人間の王に伝えろ。獣人族と戦争を起こせと。」


「かしこまりました。ナルダ様。」


 これでこちらの体制を立て直す時間ぐらいは稼げるだろう。さぁ転生者……貴様は人間と獣人、どちらの味方につく?


 

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