エノール工房


「おう!!らっしゃい…ってあんたたちは、人間の勇者サマじゃねぇか!?」


 その店主はかなり驚いている様子だった。急に来たものだから驚かせてしまっただろうか。


「急に来てすまない。迷惑だったか?」


「とんでもないぜ!!むしろ来てくれたことに感謝したいぐらいだ。んで、勇者サマはどんな武器を探してんだ?」


「いや、俺の武器じゃなく彼女の武器のことで少しな。」


「ん?そっちの嬢さんのか?」


「まぁ一度現物を見てもらった方が早い。ドーナ、見せてやってくれないか?」


 するとドーナは腰につけていたポーチから、愛用している籠手を出して店主に見せた。


「コレなんだけどねぇ。」


「どれ、ちょっと触るぜ?」


 店主は籠手を受け取ると色々なところを眺めたり、コンコンと指の先で叩いてみたりしていた。


「こいつは随分使い込まれてんな。この辺がチョイと傷んでるが…劣化したってわけじゃなさそうだ。嬢さん、あんた最近レベルアップとかで、急激に力が増したりしてないか?」


「確かに最近力は大きく増したよ。」


「やっぱりな、こいつが壊れた原因は嬢さん…あんたの力に耐えられなかったんだ。」


「そうだったのかい!?」


 確かにドーナはレッドドラゴンの宝玉を食べて、大きくステータスが上昇している。籠手が壊れたのはそのせいだったというわけか。


「こいつに使われてんのは良質なミスリルだ。軽くて丈夫なのが特徴なんだが、ミスリルで耐えきれないってなると更に上の鉱石が必要になる。直してやりてぇが、ウチにもそれほどの鉱石は無いんだ。」


「そう…なのかい。」


 少し気を落とした様子のドーナ。諦めるのはまだ早いと思うぞ?


「ここに無いのなら、ミスリルよりも強い鉱石を取ってくれば直せるんだな?」


 そう店主に問いかけると、彼はニヤリと笑う。


「流石わかってるな!!つまりはそういうこった、この王都から少し離れた場所につっ尖った山がある。そこに鉱石を身に纏ったトカゲが住んでんだ。ミスリルを体にくっつけてるヤツもいれば、鉄をくっつけてるヤツもいる。」


「なるほど…そいつらの中からミスリルよりも強い鉱石をくっつけてるヤツを倒して、ここに持ってくればいいんだな?」


「だが気を付けてくれよ?ミスリルより上のヤツは硬い上に強いからな?」


「わかった。じゃあちょっと行ってくる。次来るときは頼むぞ?」


「任しとけ!!」


 そしてドーナとともに俺は一度店を出た。


 さぁ、ひとつドーナのために頑張ってみようじゃないか。

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