朝を知らせる1羽の鳥


 朝になり窓から日光が射し込んでくる。ゆっくりと体を起こすと、窓際に一匹の鳥が飛んできて窓ガラスをコツコツとつつき始めた。


「鳥……?」


 大きく背伸びをしながら、先程からコツコツと窓ガラスをつついている鳥の方へ向かう。


「ん?何か足についてるな。」


 その鳥の足には何やら紙が結び付けてあった。伝書鳩的なやつなのだろうか。


 窓を開け、鳥に手を伸ばすもまったく逃げる様子もない。どうやら人に慣れているらしい。足から紙を取り外すとその鳥は空へと飛び去っていった。


「何が書いてあるのかな。」


 キレイに折り畳まれていた紙を開き、中身を確認するとベルグからの手紙だった。そこにはこう書いてあった。


「朝早くすまない。実はあんたと戦ってみたいって兵士が続出しててな。今、訓練所にいるんだがよかったら顔を出しに来てくれないか?」


 獣人族は疲れというものを知らないのか!?つい昨日までずっと戦ってたはずだよな!?


 思わず、はぁ…とため息を一つ吐くと小さい文字でまだ文章が綴られているのが目についた。


「ちなみにだが、シン様もあんたと戦いたいって言ってて訓練所にいるぜ。」


(さて二度寝するか。)


 何も見なかったことにしてもう一度寝ようとすると、コンコン…と部屋がノックされた。


 恐る恐る扉を開けてみると、そこにはメイドのレイラがいた。昨日あんな目にあったのだから今日は休んでもいいと思うんだが。


「おはようございます。朝早くに恐縮ではございますが、シン様がヒイラギ様をお呼びでございます。」


 逃げ道なんて無かった……。しぶしぶ俺はレイラの後に続き訓練所とやらへと案内された。


 訓練所という場所に近づくにつれ、だんだん打ち合う音が聞こえ始めた。それと共に威勢のいい声がたくさん聞こえてくる。


「ヒイラギ様、こちらでございます。」


 レイラに案内された所は、王宮を出て少し歩いたところにある四方が塀に囲まれた場所だった。


「結構大きいんだな。」


「はい、王都の兵士全てを収容できるように設計されておりますので。」


 レイラに続いて門をくぐり中へと足を踏み入れると、多数の兵士が木刀で打ち合っていた。なかなか激しい打ち合いの稽古をしている様子だ。


 遠目で兵士達の訓練を観察していると、シンとベルグの二人がこちらへ歩いてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る